モバイルゲームの台頭でも底堅い家庭用ゲームの需要

『ファミ通モバイルゲーム白書2020』で、19年の世界モバイルゲーム市場は、前年比103.3%の7兆1840億円と推計しており、ゲーム業界全体は拡大傾向にあります。ゲームを大きく分けると、「家庭用ゲーム」「モバイルゲーム」「PCゲーム」、そして最近登場しているまだ、市場規模の小さい「クラウドゲーム」の4つに分けることができます。

18年度時点で、日本、アメリカ、中国での家庭用ゲーム、モバイルゲーム、PCゲームの割当をそれぞれ見てみましょう。日本は家庭用ゲーム約3500億円、モバイルゲーム約1兆3000億円、PCゲーム500億円と、市場規模とモバイルゲームの割合が大きいです。家庭用ゲームは成長していないものの、ここ数年約3500億円の市場規模で推移していることから、底堅いマーケットだと言えます。ここにスイッチや「プレイステーション4」の存在感の強さが表れています。

アメリカでは、家庭用ゲーム約1兆円、モバイルゲーム約1兆3000億円、PCゲーム4600億円と世界最大の家庭用ゲーム市場と言えます。スイッチの年間売上高の約4割がアメリカ、約2割が日本であり、アメリカの家庭用ゲーム市場でも任天堂の存在感を示しています。

中国の家庭用ゲームの解禁に期待したが…

そして、中国市場では、子供の精神的・肉体的成長に悪影響を与えると政府が考えていたことから、00年から15年に渡って家庭用ゲーム(正確にはハードを必要とするゲーム)の販売が禁止されおり、家庭用ゲームの市場の数字はほぼありません。モバイルゲーム約2兆円、PCゲーム2800億円と現状は圧倒的なモバイルゲーム社会です。しかし、19年12月からは、中国企業のテンセントが任天堂の正規販売代理店になり、中国国内でもスイッチの販売が解禁されたことにより、20年以降は中国の家庭用ゲーム市場の爆発的成長が見込まれてました。だが、しかし……。

20年は中国市場の大開拓を企てていた任天堂ですが、「あつ森」が香港で思わぬ使われ方をしました。なんと香港の若者たちによる民主化運動が、「あつ森」の世界で続けられているのです。「あつ森」は、シミュレーションゲームで、プレーヤーはバーチャル空間で自分の島をカスタマイズし、オンライン上で互いの島を訪問できます。そして、新型コロナウイルスの影響で屋外での活動が厳しく規制された結果、香港デモの参加者らは抗議活動の中心が仮想空間へと移っていったのです。香港香港で最も有名な活動家、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏がゲーム内で『自由な香港、今こそ革命を』と名づけて抗議を開始し、ツイッターに投稿するなどしています。