サプライチェーン寸断の影響は任天堂だけではない

世界的特需が起きただけでなく、サプライチェーンの寸断もダメージとなりました。これは、任天堂に限ったことではなく、完成品を製造する「最終メーカー」は鴻海(ホンハイ)などに製造工程の請け負い〔受託製造サービス(EMS)〕を依頼しています。たとえば、その鴻海の顧客として最も有名なのがアップルです。アップルのiPhoneが全世界で高い品質を維持しているのは、鴻海のおかげとも言われるほどです。

鴻海の強みは圧倒的な価格競争力にあり、生産効率を極限まで高めたライン生産によってコスト削減し、顧客のニーズに応えるためには手段を選びません。従業員に残業を強いながらも、生産ラインの柔軟な変更などを実現します。その他にも、生産拠点での徹底した情報管理や、政府関連機関との強い結びつきなど、安く良いものを製造するためには何でもする印象です。任天堂やアップルの他にも、ソニー、マイクロソフトなども製造を鴻海に頼っています。

任天堂はすでに、生産拠点を多様化させていたが…

さて、このサプライチェーンに関しては、「仕入→組立・生産→物流→販売」この全ての工程が効率的に滞りなく進むことで、消費者に品物が届くことになります。新型コロナウイルスにより、中国の工場が停止したことで、主に「組立・生産」の部分のサプライチェーンが寸断されました。そのせいでスイッチの生産が追い付かず、品薄状態となっているのです。これは、任天堂に限った悲劇ではなく、ソニーのプレイステーションなどの他の最終メーカーにも影響が出てきています。

しかし任天堂はスイッチをほぼ中国で生産していた時期がありましたが、米中貿易摩擦などを背景に、生産拠点の多様化を図り、生産の一部を中国からベトナムに移管する計画を2019年7月に明らかにしていました。すでにベトナム工場は稼働しており、これにより多少は難を免れられたという見方もできます。サプライチェーンの偏りによる危険性は、多くのメーカーが感じていることであり、コロナ以前からサプライチェーンの拠点を多様化するなどの対応をさまざまなグローバル企業が取り組んでいました。たとえば、19年の5月ごろより、HP、デル、マイクロソフトなども、ノートPCやゲーム機の生産を中国以外の国・地域にシフトするように、生産を委託するクアンタ、ペガトロン、鴻海などに要請していました。今後、この動きが加速する可能性は高いでしょう。