患者・感染者に濃厚に接触しなければ感染は成立し難い

どうして人は偏見と差別の感情を抱くのか。新型コロナウイルスに対する正しい知識を持っていないからだろう。

感染症の専門家によると、問題の新型コロナウイルスは感染力も病原性(毒性)も季節性のインフルエンザと大差はない。インフルエンザと同様、ウイルスは飛沫感染によって人から人へと伝播してく。それゆえ直接飛沫を浴びたり、テーブルの上や電車の吊革、ドアノブに付着した飛沫に触ったりすることを避ければ、感染は成立しない。飛沫とは咳やくしゃみ、会話で飛ぶ鼻水や唾液などのしぶきで、この飛沫の中に無数の新型コロナウイルスが含まれている。

ただ、麻疹(はしか)ウイルスや結核菌などのように、空気中をウイルスが漂いながら人に感染していく空気感染(飛沫核感染)はしない。感染者や患者に濃厚に接触しなければ感染は成立し難い。

ちなみに国立感染症研究所によれば、新型コロナウイルスの場合、通常、患者・感染者とマスクを付けずに1メートル以内で15分以上会話し、その2日後に感染すれば濃厚接触とみなされる。

人と人が傷付け合うような状況はウイルスよりも怖い

日本赤十字社がとても興味深い動画をネット上に流している。

「ウイルスの次にやってくるもの」というタイトルで、新型コロナウイルスへの恐怖が広がり、人と人が互いに傷付け合う状況を描き出しながら、「そのような恐怖はウイルスよりも恐ろしいかもしれない」と警鐘を鳴らす。沙鴎一歩も人と人が傷付け合うような状況はウイルスよりも怖いと思う。いま大切なのは冷静さだ。

動画はさらに「非難や差別の根っこに、自分の過剰な防衛本能があることに気付こう」と呼びかけ、対策として主に3つを挙げている。

(1)不確かな情報をうのみにせず立ち止まって考える
(2)いつものようにきちんと食べて眠る
(3)正しく知り、正しく恐れて励まし合う

沙鴎一歩はどれも大賛成である。「感染症は社会の病である」といわれる。人間には生理的に自らの身体を守ろうとする防御反応がある。目に見えない病原体で罹患りかんする感染症に対しては、その防御反応がより強く働く。そこを自覚してバランスよく対応することが重要である。