新築価格がドカンと下がらない構造的な理由

今回のコロナショックでは、人と人との接触を減らす必要がある。新築の販売センターは密閉空間に近いので、販売はある程度自粛せざるを得ない。こうなると、新築を供給しているデベロッパーの上場企業シェアは半数以上であることから、自粛は遵守され、新築の供給戸数は大きく落ち込む。

ただし、売れ行きが悪いから価格を下げるという因果関係にはならない。供給戸数が減ると、需要は一定量あるので、リーマンショック後と同じで価格をあまり下げる必要がなくなる。販売活動がやりにくいがゆえに価格は下げにくくなる可能性が高い。売れ行きが悪化したら、価格が下がるならもうとっくに下がっている。

なぜ「需給バランスが悪化すると価格が下がる」という教科書通りの市場メカニズムが働かないかというと、供給戸数も価格も供給側が決めることができるからである。それも新築のマンションデベロッパーは大手7社で半数程度を供給している。上場企業に限定しても7割程度のシェアがある。こうした少数の会社が市場を占めている状態では市場メカニズムは働かない。これも経済学の教科書に出てくる程度の常識的な話だ。

とはいえ需要が減退する分、販売期間が長引くことになるが、それは財務力と低金利の借入のおかげで大企業は我慢することができる。こうして新築マンション価格が下がらないと中古価格が下がる理由がなくなる。

新築も中古も供給戸数が減るので、価格下落は限定的

新築の2019年の供給戸数は3万1000戸ほどだった。2020年の供給戸数は2万戸を割り込むかもしれない。過去の最低戸数は2万6000戸弱だったので、これを割り込んで史上最低になることを私は確実視している。

新築供給が少ないと、中古物件を購入する人が増える。しかし、その中古成約件数も首都圏の3月は前年同月比で12%低下した。3月に入って株価が落ち込み、不動産価格への先行き不安はJ-REIT(日本版不動産投資信託)が平均25%下げたことから取引を控える層は確実に増えたと想像される。しかし、取引件数は4月以降本格的に下がる。取引は引き渡しの約1カ月前には契約しているからだ。3月はまだコロナの余波は小さかったと見たほうがいい。

こうして、中古の取引量も減ると、中古価格が下がりにくくなる。投げ売りなどの売り物が増えると言う人がいるが、投げ売りができるのは一部に限られる。なぜなら、通常マンションを買う時には価格の9割程度の住宅ローンを借りているからだ。1割超下げたところでは、住宅ローンの返済ができなくなってしまうので、売るに売れないのだ。