また、四輪駆動であれば、4つのタイヤがつねに接地して動力を伝えている。これまた安定がいい。同社が開発した得意技術には安全の思想が最初から含まれている。
走行安全が達成されていれば水たまりでも、雨の高速道路でも安心して走ることができる。
走行安全のために同社は四輪駆動車に初めてアンチロックブレーキを採用した。このため雪道で横滑りすることはまずなくなった。急にアクセルを踏んでもスピンしないようなトラクションコントロール、横滑りを防止するビークルダイナミクスコントロール……。
走る、曲がる、止まるの機能のすべてを安全に保つ機構を開発することが文化となっているのは、戦前のマリー技師の指導が徹底していて、同社技術者の体質になっているからだろう。
昔の開発者が考えた「轢かれた人を網ですくう」装置
三つ目がパッシブセイフティの実現である。
パッシブセイフティとはつまり、衝突時の安全を確保するという技術だ。
スバル360の開発者の百瀬はスバル360を開発していた頃からすでに工場内にコンクリートの壁を作り、時速40キロで壁に衝突させる実験を繰り返した。
実験をやったことで、ぶつかった後、車がつぶれても乗員を守るような構造にしたのである。
「搭乗者を守る」のは百瀬にとって当たり前のことだったからだ。
そして、その時に百瀬は不思議な装置を考えている。
実用化はしていないが、車にぶつかってきた歩行者を網ですくいとる装置だ。歩行者がぶつかったとたん、車体の前からするすると大きな網が出て、人をすくい取る……。
そんなマンガみたいなアイデアまで総動員して、衝突した時の安全を考えていたのである。
その結果、今でもむろん車内にエアバッグが装備されているだけでなく、歩行者が車にぶつかった時にも車体の前部でかつ外側にあるエアバッグが作動するようになっている。
衝突を回避する「アイサイト」の登場
四つ目が予防安全である。同社は予防安全を実現するため、ふたつのカメラ(ステレオカメラ)で人の目と同じように歩行者、自転車、オートバイなどを検知し、近づきすぎたらブレーキをかける機構を開発した。
それがアイサイトだ。
昼間だけでなく、夜間でも雨でも霧でも猛吹雪でもちゃんと対象を検知するのがこの機構の優れたところだろう。
ただし、アイサイトのような路上の対象を検知して車を止める技術は世界中の自動車会社がそれぞれ開発している。
検知するためにカメラを使うところもあれば、電波やレーザービームを用いる会社、カメラとレーザー、電波を併用している会社もある。