渋滞の原因は大型トラックなのか
そんな中、時折「こうした大型トラックのノロノロ運転が渋滞を作っている」という声を聞くことがあるのだが、渋滞を発生させるのはトラックの「ノロノロ運転」ではなく、むしろ一般車が無駄に光らせる「ブレーキランプ」で、それに反応した後方のドライバーが次々にブレーキを踏むことのほうが要因としては圧倒的に大きい。
そしてもう一つ、トラックドライバーが混雑する道路をノロノロ運転する最大の理由が「バタ踏みの回避」だ。大型トラックのブレーキは「エアブレーキ」といって、不要に踏み込んだり頻繁に踏み続けたりすると、エアタンクに貯まっていた空気がなくなり、ブレーキが利かなくなってしまうことがある。
ドライバーの間では、こうした踏み方を「バタ踏み」と呼んでいるのだが、過去にはこのバタ踏みが原因の死亡事故も多く発生している。
特に山道や渋滞中の道では、前のクルマのブレーキランプにいちいち反応してブレーキを踏んでいると、こうした危険が生じやすくなるため、なるべくゆっくり走ることで、ブレーキを踏まなくてもいいように走ろうと日々努めているのである。
一般ドライバーがトラックのノロノロ運転に「イライラする」と感じるのは、一般道や渋滞中だけではないはず。高速道路の「追越車線上」でも同じくらい邪魔だと感じるところだろう。が、これにもトラックの構造上の理由がある。
ノロノロ走りたいのではなく「ノロノロでしか走れない」
大型トラックには、高速道路での事故防止のため、2003年からスピードリミッターの装着が義務付けられた。これにより、大型車はどんなにアクセルを踏み込んでも、時速90キロまでしか出せなくなったのだ(大型車の高速道路上の制限速度は時速80キロ)。
そんな中、運送会社の多くが「社速」としている時速80キロで走るトラックを、この90キロのトラックが追い越そうとすると、単純に計算しても約1分間「トラックの並走」が起きてしまう(車間80メートル、車長10メートルの場合)。
こう言うと、「時速10キロの差くらい我慢して、全トラック時速80キロで最左車線を走ればいい」とする声が返ってくるのだが、時間と戦う長距離ドライバーにとって、1時間10キロの差は大変大きい。単純に計算して、10時間走れば100キロ。東京からだと、沼津あたりまでの差が開く。
図体の大きいトラックの並走に遭遇し、イライラすることもあるだろうが、それを運転しているトラックドライバー自身も、差し迫る到着時間の中、なかなか追い抜けずにストレスを抱えている。ノロノロ走りたいのではなく「ノロノロでしか走れない」ことを理解してもらえると、互いの運転意識も多少は改善されるのではないだろうか。