出生前診断を考えるべき年齢に正しい答えはない

もちろん何歳以上であれば出生前診断を考慮すべきかということに正しい答えはありません。どんなに年齢が高くても必要ないと考えればまさにそのとおりですし、実際にそのように考えている妊婦さんも少なくありません。

室月淳『出生前診断の現場から 専門医が考える「命の選択」』(集英社新書)
室月淳『出生前診断の現場から 専門医が考える「命の選択」』(集英社新書)

先の表であげた確率をどうとらえるかはむずかしい問題であり、どの程度以上のリスクであれば心配であり、どの程度以下であれば安心して分娩を迎えられるかという客観的な基準はもちろんありません。出生前診断は自分自身でよく考えて決めなければならないことです。

100分の1(39歳の人のリスクくらい)という数字を聞いてとても高いと不安になる人もいれば、100回に1回程度ならば大丈夫だろうと安心する人もいます。高齢を理由に検査を希望してくる人は、何分の1といった頻度を具体的に意識して不安を抱いているわけではかならずしもないようです。

35歳以上は高齢妊娠と呼ばれ染色体検査を受けることが勧められているということを、ふだんからメディアの報道などによってなんとなく刷り込まれていたり、家族や友人から直接いわれていたりすることが多いようです。そのあたりはじゅうぶんに自覚すべきことでしょう。

「何歳以上ならば出生前診断を受けるべき」には要注意

そもそも「何歳以上ならば出生前診断を受けるべき」などといわれたときはかなり注意する必要があります。もしそれがマタニティ雑誌の特集記事であったり、インターネットのブログであったりするときは、出生前診断の広告の一種であることもよくあります。

出生前診断が商業主義に結びつくとき、妊婦さんが感じている不安や心配につけこんで高額な出生前診断を勧めるクリニックが現れて、医療がいわゆる「不安産業」と化します。そうではなく逆に国や自治体がそういうことを言い出しはじめると、社会が優生思想に傾いている徴候を示していることになり、さらに危険なことといえるかもしれません。

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