赤ちゃんの先天的な病気を知るため、出生前診断を受ける人が増えている。宮城県立こども病院産科科長の室月淳氏は「健康な子どもを産みたいと思うのは当然だ。しかし検査をしても、求めている安心が得られるとは限らない。検査の結果、苦しみに直面することもある」という――。
医師説明する妊娠中の女性の男性と座っています。
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出生前診断は、命を選ぶ重い選択を迫られる

妊婦さんのためのあるウェブサイトに、「妊娠中いちばん不安に思っていたことはなんですか?」というアンケートが紹介されていました。そこでは、このような回答が圧倒的だったことが印象的でした。

「障害があったらどうしよう。育てられるか」
「とにかく赤ちゃんが五体満足で生まれてきてほしいということだけ」

赤ちゃんが五体満足で無事に生まれてくることを願わないカップルはいないでしょう。妊婦さんがこういった願いをもつのは当然です。一方で、その不安をなんとかして解消し、安心を求めようとしたとき、「出生前診断」という選択肢が現実にあらわれることになります。

生まれつきの赤ちゃんの病気というのは4~5%くらいにあるといわれています。いわゆる染色体の病気といわれるものは、そのなかの4分の1程度にすぎず、それ以外はさまざまな原因によって生じてきます。

「安心したいから出生前検査を受けたい」ということであれば、出生前診断は慎重に考えたほうがいいかもしれません。「安心できるかも」という期待を大きくいだいて検査を望まれると、逆に不安が増大するだけの結果になることがあります。それ以上に、赤ちゃんの命を選ぶ、重たい選択が待ちかまえています

本稿では私が体験した3つの事例を紹介したいと思います。