安心するために受けた検査で予想外の結果
ケース1:「念のための検査」で染色体の病気が見つかったカップル
1人目は38歳の妊婦さんの例です。結婚して何年かの不妊のすえにようやくさずかった子だったので、費用が多少高額であっても、リスクが低い母体採血でわかる検査である新型出生前診断(NIPT)をふたりで相談して選びました。
結果は予想外のダウン症候群「陽性」という結果で、おふたりは大きな衝撃を受けました。高齢で心配だから、というお話でしたが、実のところ安心したいため念のために検査を受けたというところが本音だったようです。
動揺がおさまらぬままに、確定診断のために羊水検査をおこなってダウン症候群であることが確認されました。
NIPTの検査前カウンセリングでは、検査によって胎児の染色体の病気が最終的に確認されたときはどうするか、検査結果が出る前にきちんと考え、相談して決めておくようにアドバイスすることがふつうです。
このおふたりの場合も、もし染色体異常が見つかったら、残念だが妊娠をあきらめようとはいちおう決めてはいましたが、実際にそのようになってしまうとほんとうに苦しい立場においこまれるのです。
「陽性」の結果が出たときはすでに胎動も感じるようになって、おなかのなかにいる赤ちゃんもリアルに実感できるようになっていました。中絶を決めるにはぎりぎりの時期であり、ゆっくり考えたりあらためて相談することもできなかったのです。
子どもづれの家族を見るたび心が痛む
この妊娠中期といわれる時期にでは、人工妊娠中絶といってもふつうとおなじ方法で産むことになります。はじめてのお産ということもあってなかなかたいへんなお産をして、心身とも疲労困憊となりました。亡くなった子どもと対面して涙を流し、こんな悲しい検査を受けたことがよかったことなのかわからなくなったといいました。
あれから1年たったいまでも心の傷が癒えておらず、子どもづれの家族を見るたびに心が痛むということで、次の妊娠という気持にはいまだになかなかなれないようです。
35歳以上の妊婦さんが、自分の年齢を気にされて出生前診断を希望される方は少なくありません。その多くの方が不安を解消したい、妊娠中安心をして分娩にのぞみたいという動機で検査を受けますが、一定の割合で「陽性」という結果がでてきます。
羊水検査で診断が確定する19~20週すぎには胎動感もでてきており、ケース1のカップルのように、中絶に躊躇して悩むことになります。そんな時でも自分が納得して決めたことだからとあとから納得できるかが重要です。