紙の雑誌をつくり、そのまま電子化すればそれなりの収益になる「dマガジンはおいしい」という時代は終わりつつあるのだろう。書籍・雑誌の物流にも押し寄せる輸送コスト増の波とあいまって、いよいよ紙とは別にウェブにリソースを割く、または紙をやめてウェブに移行しないと立ちゆかなくなってきた。

しかし現状のニュースサイトは多くが広告で収益を上げるモデルだ。ビジネスとして成立させるにはたくさんのユーザーに記事を読んでもらわなければならない。だからニッチなジャンルの専門誌はウェブ移行が難しい。

児童書や漫画、ウェブに頼れない中規模版元は絶望的

紙の本で堅調だと言えるのは児童書くらいのものだろう。

児童書は90年代に子どもの本離れがピークに達し、かつては出版市場全体の10%ほどあったものが2~3%にまで落ち込んでいた。それが、90年代末から官民問わず多種多様な読書推進の政策・活動が打ち出され、現在では子どもの生活に再び読書が組み込まれるようになっている。結果、劇的にV字回復し、今では出版市場全体の12~3%を占めるに至り、新規参入が相次いでいる。

一方で、マンガはやっておらず、児童書のような底堅いジャンルを持たず、雑誌のウェブ移行も難しいという中小版元をとりまく状況は厳しい。電子書籍でもコミック以外で伸びているのはライトノベルやビジネス書、写真集に限られる。

4タイプに集約される「生き残れる出版社」

結局、今の時代に適した出版社のタイプは4つに集約される。

(1)紙、デジタル(電子書籍、ウェブ、アプリ)、2次展開(海外版権や物販、ライブビジネスなど)を複合的に組み合わせてビジネスにできる大手
(2)中堅・老舗であれば、雑誌中心からウェブ中心へのシフトに成功した会社
(3)児童書など、元気のいい特定の市場の客層を押さえている版元
(4)コスト的に身軽で、ニッチだが確実にいる読者をつかめば成立する小規模出版社

この4つにあてはまらない会社が生き残っていくのは、至難の業ではないか。

大半の一般読者にとって、中小版元がなくなっても、日々の生活には影響しないだろう。裏を返せば、生活に影響するほど価値のある書籍や雑誌であれば、版元が潰れても他社に引き取られる。ドライに言えば、なくなってもどうにかなるわけだ。

しかし同じ業界にいる私としては、「企業が淘汰されるのは資本市場における必然」などと言って切り捨てられるような心境にはない。