大手3社は増収増益、デジタル部門が支える

2019年の出版大手3社の決算は、小学館、集英社、講談社のいずれも増収増益だ。しかし売上の内訳を見るといずれも紙の書籍や雑誌は減っており、伸びているのは電子、物販や版権ビジネス、広告収入である。

つまり電子コミックやマンガアプリなどのデジタル部門が伸び(マンガアプリでは課金のみならず広告からの収益もある)、国内外にIP(知的財産)を展開し、版権や物販、2.5次元舞台に代表されるライブエンタテインメントなどから稼ぐことで、好業績になったわけだ。

こうした版権ビジネスから得た収益は冒頭に述べた「出版市場1兆5432億円」には含まれないから、出版業界全体としてはそれ以上の売上を叩き出していることは間違いない。

ただし、こうしたデジタルの伸びを、コミックのない出版社がマネするのは難しい。それは読者が近いエンタメ小説でも同じだ。コミックに比べて小説は「ウェブやアプリで読ませてマネタイズする」というスマホ時代への適応が圧倒的に出遅れている。

それだけではない。中国や韓国ではウェブ小説や小説アプリサービスが伸長しており、それと比べると日本の小説業界はデジタルシフトが致命的に遅れている。さらに二次展開も一部を除いて旧態依然とした状態が続いている。