1996年をピークに縮小しつづけてきた出版市場が、昨年、ついに微増に転じた。ライターの飯田一史氏は「数字上は『底を打った』と言えるが、紙の雑誌と単行本で成り立つ時代はもう終わった。堅調なのは主に一部の大手で、中規模の出版社はさらに厳しい状況になるだろう」という――。
出版市場「23年ぶり」のプラス成長
出版科学研究所によれば、2019年1~12月の出版推定販売金額は紙と電子を合わせて1兆5432億円で、前年比0.2%増の成長となった。この調査で前年を超えたのは100万部越えのヒット作が相次いだ2004年、電子出版の統計が加わった2014年の2回だけ。これらを例外と考えれば、出版市場の復調は1996年から23年ぶりだ。
内訳は紙の出版物が1兆2360億円(前年比4.3%減)、電子が3072億円(同23.9%増)。紙は「書籍」が6723億円(同3.8%減)、「雑誌」が5637億円(同4.9%減)で、15年連続でマイナスとなった。
一方で、電子は「コミック」が2593億円(同29.5%増)と好調で、海賊版サイトの閉鎖以降、順調に成長を続けている。「書籍」は349億円(同8.7%増)、「雑誌」は130億円(同16.7%減)で、電子コミックの大幅な成長が出版市場全体を下支えしたといえる。
数字上は「底を打った」と言えるが、その捉え方は版元(出版社)によって異なるだろう。紙の雑誌と単行本で成り立っていた狭義の「出版」の時代は終わりつつあり、電子を前提とした新しいビジネスに適応できているかで明暗が分かれるからだ。