メッセージアプリとして日本で圧倒的なシェアを持つLINEのリリース時に社長をされていた森川亮さんに以前お話を伺ったことがある。森川さんの会社では、それまでも様々なアプリを公開してきたけれども、LINEは立ち上がりの初速が劇的に好評だったという。それを見て、大ヒットを確信したと森川さんは言っていた。

脳の印象の初速が大切である

ある商品やサービスがヒットするかどうかを考えるうえでは、脳の印象の初速が大切である。そのためには第一印象についての感度、自分自身を見つめるメタ認知を高めていかなければならない。

紅白歌合戦で『カイト』が披露された瞬間は、まさに第一印象の初速を測る絶好のチャンスだった。日々の生活の中で、初めて出合うものの印象をきっちりと把握したい。

初速の領域が終わると、次に問題になるのは「単純接触効果」である。

NHKのオリンピック、パラリンピック番組のテーマ曲ともなると、20年、『カイト』を耳にする機会はたくさんあるだろう。刺激の内容に関係なく、接触する回数が増えると好感度が増していくというのが「単純接触効果」である。

NHKの朝ドラのテーマ曲など、初めて聴いたときにはそれほどでもないのに、毎日耳にしているとだんだんそれなりに好きになっていく。これが単純接触効果であって、だからこそ、何かを仕掛ける側は、人々が接触する回数をなんとか増やそうとする。

街を歩いていて目立つ政治家のポスターも、単純接触効果をねらったものである。とにかくポスターを張って顔を覚えてもらえれば、政策や人物に関係なく好感度は増してしまう。

もっとも、単純接触効果による好感度の増加、ヒットにも限界がある。本当に人々にあまねく愛され、大ヒットする存在は、やはり第一印象の初速が大きい。

大当たりする作品は、第一印象の初速と、単純接触効果のかけ算で生まれる。

20年は、どんな流行が生まれるのか。第一印象の初速に注目したい。

(写真=Natsuki Sakai/AFLO)
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