タイの口からソフトクリームが飛び出している

TAIYAKI NYC」は、2016年にニューヨークのダウンタウンにオープンして以来、商品がインスタグラムなどのソーシャルメディアに溢れ、タイヤキというものを一躍有名にしたのだ。そしてここのタイヤキは、日本人が想像するたい焼きを超えてしまっている。

©TAIYAKI NYC
ニューヨークで販売されているたい焼きのスイーツ。大きく開いたタイの口の中にソフトクリームが入っている

普通ならお魚の形をした皮の中に入っているはずのクリームが、タイヤキの口から出ている。しかもこれが冷たい、ソフトクリームだ。

つまり、タイヤキをアイスクリームコーンに見立てるという画期的なアイデアなのだ。さすがにこれはなかなか日本人には思いつかないだろう、と思ったらやはり考案者は日本人ではなかった。

創業者の一人は中国系アメリカ人のジミー・チェンさんだ。自身も25歳のミレニアル世代であるジミーさんはこう語る。「日本は世界に誇る食の王国だ。その日本に旅行中にタイヤキに出会い、ユニークなお魚シェイプのワッフルがある! と驚いたし、その長い歴史も魅力的だった。当時はニューヨークでアジアン・テイストのアイスクリームがトレンドになり始めていたので、ソフトクリームと組み合わせることを思いついたんだ」

タイヤキ・ソフトクリームは大ヒットし、TAIYAKI NYCは4年間でニューヨークだけで3軒、マイアミ、ボストン、そしてカナダのトロントにも出店するまでになったのである。

©TAIYAKI NYC
たい焼きを焼いている様子

なぜ、食事ではなくスナックが人気なのか

アメリカではジミーさんに限らず、若いジャパニーズ・カルチャーのファンが間違いなく激増している。

ラボのメンバーは「今は日本のものなら全部かっこいいからね」とさえ言う。

ここ10年来のアニメブームから、ユニクロなどのブランドまであらゆるものが集積して今の日本のポップなイメージを作っている。ネットを通して日本の面白い食アイテムを掘り出す若者も多い。

「日本の食アイテムは、アメリカにはない珍しいものが多いから、それだけですぐネタにできる」

確かに、タイヤキからもちアイスまでインスタにシェアしたくなるのはよく分かる。またアマゾンで買った珍しいスナックなどを「食べてみる」というテーマでユーチューブやフェイスブックに投稿する番組も人気だ。

日本に旅行する若者も増えているから、彼らが持ち帰る情報も見逃せない。そして今年はついに東京オリンピック・パラリンピック。日本への関心はおそらくピークを迎えるに違いない。

ところが、ここで1つまた疑問が生まれてくる。タイヤキももちアイスもチーズケーキも若者に人気があるのは、「食事」ではなく「スナック」アイテムばかりなのは一体なぜだろう?

もちろんスナックの方がアマゾンなどで手に入りやすいというのも理由だろう。でももう一歩踏み込むと、アメリカのこの世代の食に対するはっきりとした傾向が浮かび上がってくる。