日本が正しいか、中国が正しいかは、いくら議論しても日中間では結論は出ないだろう。お互いに自分のほうに正義があるからだ。そしてお互いに正義をぶつけ合っている限りは、何の着地点も見出せない。
このときに役に立つのがフェアの思考だ。
お互いの価値観の相違によってお互いに正義があり、どちらの主張が絶対的に正しいか結論が出ない場合でも、それぞれの主張がフェアかどうかは判断できる。フェアか否かは、価値観に左右されない。立場の違い、価値観の違い、それこそ正義の違いがあったとしても、それを乗り越えて評価できるものが「フェア」というものである。
中国の刑事司法制度が正しいのか、日本の刑事司法制度が正しいのかは別として、フェアの思考からすると、今回の日本政府の主張に怒らないのであれば、中国の同じ主張にも怒ってはならない。すなわち香港のデモに味方することはダメだ。
逆に、中国の主張に怒り、香港のデモに味方するなら、フェアの思考からすると、今回の日本政府の主張にも怒らなければならない。僕はこの立場だ。
フェアの思考ではありえない「日本の主張だから正しい」という結論
日本は正義、中国は不正義とういう前提から物事を考えるからおかしくなる。中国においては、中国は正義、日本が不正義という前提になっているのであるから、着地点を見出せなくなる。
このような前提から考えてしまうと、日本と中国の主張が同じであっても、日本の主張は正しく中国の主張は正しくない、あるいは逆に日本の主張は正しくなく中国の主張は正しいという結論になってしまう。
今、メディアを通じてコメントをしているインテリたちの多くはこの立場だ。どちらが正しいのかを論じ合ってしまっている。
フェアの思考では、同じ主張なら、同じ評価をしなければならない。中身が同じ主張について、日本の主張がOKなら、中国の主張もOKと評価しなければならない。逆に中国の主張がダメなら、日本の主張もダメだと評価しなければならない。
(略)
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※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.183(1月14日配信)の本論を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【フェアの思考(1)】「ゴーン氏問題」を端緒に日本が考えるべき刑事司法制度改革の問題点》特集です。