お金だけが取引の手段ではなくなりつつある

お金には「欲望の二重の一致を不要にする機能」があるという。どういうことか。お金を介在させない物々交換には、「A氏がB氏の持ち物を欲しいと思い、B氏がそれをいらないと思っている」だけでなく、「B氏がA氏の持ち物を欲しいと思い、A氏がそれをいらないと思っている」という二重の一致が必要だ。

かつては、こんな二重の一致が起こる可能性は奇跡と呼べるほど低かったので、何にでも交換でき、誰もが欲しがるお金が必要だった。

しかしネットの普及で、今や二重の一致は奇跡ではなくなった。今後スマホ決済などによって売り手と買い手がインターネットで結ばれていけば、やがて物々交換や知識・労働の提供など、お金を用いない取引が拡大していくだろう――。

もちろんこれはあくまで1つの予測だ。とはいえ、すでにネットの仲介機能を活用した物々交換サイトや、サービスやモノの対価として自らの知識や労働を提供するサイトも登場している。お金だけが取引の手段ではなくなりつつあるのだ。

では、私たちはお金の価値が揺らぐ未来をどう生きたらいいのか。著者はその重要なキーワードとして「自己実現」を挙げるが、ここは本書の読ませどころなのでぜひ紐解いていただきたい。お金の将来を予測し、どう身構えたらいいのかを考えるうえで、示唆に富んだ一冊だ。

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