いい予感を味わえる

本殿の御姿岩に参拝し、私は山道を下った。途中、土産物屋の女性に「梅まんじゅうはいかがですか?」と声をかけられる。店に入ると、籠の中には最後の1個。「残りものには福がありますよ」と勧められて、私はそれを買った。

「みそぎ橋で食べてくださいね」

——そうなんですか?

「そこで食べると、宝くじが当たります」

——本当に?

「本当に。もし当たったら、また報告に来てくださいね」

髙橋秀実『パワースポットはここですね』(新潮社)

彼女はにっこり微笑んでそう言った。当たるわけないだろう、と思ったのだが、せっかくなので私はみそぎ橋まで行って、橋のたもとで梅まんじゅうを食べた。

社殿ではなく、ここがパワースポットということか。空腹のせいか甘さが体に染み入る。そして鳥居を抜けると達成感を覚え、なぜか「いい予感」がした。

いいことがあるような気がする。

結果は別として、とりあえず今は予感を味わおう。とりあえずパワースポット。勘違いかもしれないが、私は日本文化の鉱脈を発見したような気分になったのである。

※本文の旧字は一部、新字に改めました。

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