「人を鏡とすれば、自分の行ないを正すことができる」

生え抜きの房玄齢と杜如晦に対して、魏徴は外様であり、しかもかつて魏徴は、李世民の命を狙った敵方でした。

自分に敵対した人間であっても、その人物が有能であるならば、登用する。太宗は、私情を抜きにして魏徴を諫言大夫(皇帝が良くない施政をした場合にいさめる役職)に任命しました。

魏徴が亡くなったとき、太宗は、魏徴の死を次のように悼んだと言われています。

「銅を鏡にすれば、衣服や身なりを整えることができる。歴史を鏡とすれば、人の世の興隆や衰亡を知ることができる。人を鏡とすれば、自分の行ないを正すことができる。厳しいことを言ってくれる魏徴は、鏡のような存在であった。魏徴を失い、私は一面の鏡を失ってしまった」

自分のまわりにいるのは茶坊主ばかりで、もう誰も自分を諫めてくれない。自分の本当の姿を教えてくれる人はもういなくなったと、太宗は魏徴の死を嘆き悲しんだそうです。

リーダーが「裸の王様」に陥らない3つの方法

企業不祥事の原因のひとつは、リーダーの姿勢にあります。リーダーが魏徴のような存在を遠ざけ、茶坊主やゴマすりばかりを集めると、裸の王様になります。ゴマすりは、裸の王様を見ても、正直に裸だとは言ってくれません。

リーダーが正しい意思決定を行うためには、厳しい直言をしてくれる人をそばに置いて、鏡とすべきです。

リーダーが魏徴のような存在を得るためには、次の3つの方法が考えられます。

①厳しい監査役を置く
②若手が声を上げる
③「360度評価」を導入する

これらを一つずつみていきましょう。