①厳しい監査役を置く
ライフネット生命時代の僕にとって、魏徴は常勤監査役でした。僕よりも3歳年上で、保険業界の天国も地獄も知る大人物です。常勤監査役は本当に厳しい人で、「大将はもっとどっしりしていないとダメだ」「おまえ、アホか」と、毎日のように叱られていました。
立派な経歴を持ちながら、普段は何も言わないが、いざというときにはズバズバものを言う。そんな社外取締役のことを、作家の城山三郎は「ゲンコツつきの金屏風」と呼んだそうです。ライフネット生命の社外役員は全員、「ゲンコツつきの金屏風」でした。僕が道を誤らなかったのは、金屏風の叱責があったからです。
②若手が声を上げる
会社の中で違和感を覚えたら、すぐに発言したほうがいい。特に若い社員は会社の文化に染まっていない分、声を上げやすいと思います。
日本は「決めたことはみんなで守りましょう」という風土があり、声を上げにくい。でも黙っていることは、共犯になることと同じなのです。
③「360度評価」を導入する
貞観2年に、太宗が魏徴に質問をしました。
「どのような人物が明君で、どのような人物が暗君だと思うか?」
すると魏徴は、即答します。
(巻第一 君道第一 第二章)
なぜ多くの人の意見を聞く必要があるのか
魏徴が太宗に伝えているのは、「360度評価」の大切さです。360度評価とは、下からを含めて複数の人が評価を行う評価方法です。
評価者の評価の違いに着目することで、物事を的確に、立体的に捉えることができます。
なぜ、多くの人の意見を聞く必要があるのかといえば、物事は見る人、見る角度によって、善にもなり、悪にもなるからです。したがって物事を公平に、客観的に評価するためには、さまざまな視点からの意見を集める必要があるのです。
リーダーは部下の直言を積極的に受け入れ、自らを鍛え上げる。そして部下は、上の意向を忖度せず、不条理な命令には異論を唱える。それこそが組織の自浄作用を働かせる要諦だと僕は思います。