なぜ、衝突を避けられなかったのか
踏切支障報知装置は現場の踏切にも設置されており、事故時も正常に作動していたが、快特列車は踏切手前で停止できず、立ち往生していたトラックと衝突した。
なぜ衝突を回避することができなかったのだろうか。事故から2カ月が経過し、神奈川県警と運輸安全委員会が調査を進めているが、原因究明には至っていない。
日本では、航空・鉄道・船舶で事故、または事故につながりかねない事態(重大インシデント)が発生した場合、国土交通省の外局という位置付けの運輸安全委員会が、原因究明のための調査と、再発防止・被害軽減に向けた施策・措置を意見・勧告する仕組みが整備されている。
だが、調査には時間がかかる。これまで調査対象となった踏切事故の、発生から調査報告発表までの平均日数は約250日。遮断機を備えた「第1種踏切」の事故に限ると平均約300日に達し、最長で1年半を超えている(いずれも前身の航空・鉄道事故調査委員会時代を含む)。
しかし鉄道は原因究明まで列車の運行を停止するわけにはいかないので、まずは速度規制など暫定的な安全対策を講じ、調査報告後に恒久的な対策を実施することが多い。
2つの再発防止策の中身は
そんな中、京急は11月12日に行った「中間報告」の中で、現時点での再発防止策として2点の対策を発表した。
第1の対策は、踏切支障報知装置の作動を知らせる発光信号機の増設だ。当初京急は、社内基準に基づき遠方発光信号機(踏切から最も遠い発光信号機)は600m手前から目視できる場所に設置しているとして、現場の踏切から340mの場所にある信号も、600m手前から確認できると説明していた。
ところが設置基準には600mという距離は定められておらず、最高速度からの停止距離(120km/h運転区間の場合は約520m)を基準に設置していると訂正。現場の遠方発光信号機も実際には踏切から390mの場所にあり、目視が可能な距離は説明より短い570mだった。
しかもこの遠方発光信号機の手前には左カーブがあり、570m地点からは信号はコンクリート柱の合間にわずかに見えるだけだったことが判明。京急は視認性に問題があったことを認め、より手前に信号を増設する方針を固めた。
第2の対策は、運転士が発光信号機を確認した際の、ブレーキ操作の取り扱い基準の変更だ。これまで京急の社内規程では、発光信号機を確認した場合も常用ブレーキ(通常使用するブレーキ)を使用すると定められていたが、非常ブレーキ(より強い非常用のブレーキ)を使うことに改めた。