脳の働きに着目した腰痛治療で目覚ましい成果を上げ、北海道から沖縄まで全国から患者が殺到しているのが、福島県福島市にある福島県立医科大学附属病院だ。

そもそも腰痛の原因は、なぜ特定しにくいのだろうか。同大学整形外科学講座准教授の二階堂琢也さんは、次のように説明する。

「原因不明の腰痛のことを、医学的には非特異的腰痛と呼びます。腰痛のうち、非特異的腰痛が85%という古い海外の研究データが一人歩きをしていますが、最近の日本の研究では、非特異的腰痛は22%にすぎないというデータも出ています。とはいえ、非特異的腰痛がとても多いという事実に変わりはありません。というのも、客観的な検査データだけでは、腰痛の原因を特定できないケースが多いからです」

知っておきたい、よくある腰痛の種類

腰痛の原因は、実際には様々で、複数の原因が重なっていることも少なくない。

大きく分けると、①腰の骨や筋肉などに異常がある場合、②ほかの病気などによって生じている場合、③心因性など非器質性の場合の3種類がある。

腰痛の原因のうち、最もわかりやすいのが、①のパターンだろう。その中でも患者数が多く、皆さんにも聞きなじみがあるのが「腰部椎間板ヘルニア」と「腰部脊柱管狭窄」だろう。

腰椎(腰の部分の背骨)には、「椎骨」という骨が連なっていて、前方は椎体と椎体の間に椎間板という組織が、後方には椎骨と椎骨を連結してスムーズに動かすための「椎間関節」という組織がある。

その椎骨と椎骨を連結する「椎間板」という軟骨が変形して飛び出し、まわりの神経を圧迫したり、炎症を起こしたりするのが腰部椎間板ヘルニア。

それに対して、腰椎の脊柱管(背骨の真ん中の空間)が狭くなり、そこを通っている神経が圧迫されるのが腰部脊柱管狭窄だ。

①としては、椎骨の背中側の関節である「椎間関節」に障害がある場合も、腰痛を引き起こすケースがある。

また、子どものときにスポーツで腰を酷使したのが主な原因で、腰椎の椎骨がずれたり、分離したりしてしまう「腰椎分離すべり症・腰椎分離症」もある。

そのほか、骨粗鬆症などによる腰椎の圧迫骨折、終板(椎骨と椎間板の間にある軟骨)の障害、背中の筋肉の衰えなどが、腰痛の原因になることもある。

前述①では、問診や簡単なテストで腰痛の原因に当たりをつけられるケースもあると二階堂さんは話す。

「例えば、かんけつこうという症状があれば、腰部脊柱管狭窄を疑います。CT検査では、骨の異常の有無を詳しく調べます。足のしびれや痛みなどの症状も伴えば、MRI検査で神経の異常の有無も調べます。そうした画像検査などで器質的異常(骨や筋肉、神経、内臓などの異常)が見つかり、症状と符合すれば、原因が絞り込めるというわけです」