自腹のカネが有権者に渡っただけでも辞任している
安倍氏は、懇親会などで後援者らと写真を撮っている事実は認めながら、招待客の選定基準といった内容については、セキュリティーなどの理由で「答えは差し控える」と述べるにとどめた。
田村氏の質問は、自民党議員らの情報を丹念に調べた労作ではある。ただし、「桜を見る会」に政権与党の後援者が相当数参加していることは周知の事実だ。安倍氏の「お友達」や後援者が多数含まれていることも多くの人が知っていた。それなのになぜ、秋も深まった今、「桜を見る会」の問題が盛り上がっているのか。
大きな理由は10月末の2つのスキャンダルだろう。
菅原一秀経済産業相は10月25日、秘書が有権者に香典を渡し、選挙区の有権者にメロンやカニを贈っていた疑いなどを指摘されて辞任。31日には河井克行法相が、参院選に出馬した妻の運動員に法定を超える報酬を渡していた疑いを報じられて辞任した。2人が批判を受けたのは「政治とカネ」の認識の甘さだ。いずれも自腹のカネが有権者や運動員に渡ったことの責任を取った。
「桜を見る会」はどうか。出席者によると樽酒、オードブル、軽食などが提供された。みやげもあった。メルカリをはじめとするフリマアプリには、みやげとして提供された酒升などが出品されている。
地元後援会の人間を堂々と「税金」を使って接待
もちろん選挙区から上京してくる後援者らは、交通費、宿泊費など応分の負担はしているだろう。それは後援会のツアーで東京1泊旅行をするのと同じだ。しかし、同じ1泊旅行でも浅草やスカイツリーを見学して帰る旅行に、「桜を見る会」が加われば価値は変わってくる。
菅原氏や河井氏は有権者に「自腹」で金品を配った。一方、安倍政権の幹部たちは「桜を見る会」において、地元後援会の人間を堂々と税金を使って接待している。
「政治家が自分のお金でやったら明らかに公職選挙法違反。(今回の件では)税金を利用している。モラルハザードを安倍政権が起こしている」という田村氏の指摘は多くの国民が共感しているのではないか。
「桜を見る会」の問題は、菅原、河井の両氏が辞任したスキャンダルよりも悪質ではないか。そういう疑念が広がりつつある。