被告人を裁く法廷は、裁判長・検察官・弁護士が働く現場だ。彼らの腕の見せ所はその「話術」。傍聴歴19年で『なぜ元公務員はいっぺんにおにぎり35個を万引きしたのか』(プレジデント社)を上梓したノンフィクション作家・北尾トロ氏が「法曹三者がプロ魂を発揮し、おもわずもらい泣きしてしまった言葉」を紹介する――。
地味で退屈な法廷がドラマチックになる瞬間がある
僕が裁判傍聴をはじめてから19年がたつ。法廷は被告人が裁かれる場所であると同時に、裁判長、検察官、弁護士のいわゆる法曹三者が働く現場でもある。
今回は過去に傍聴した裁判の中から、僕が「これぞプロフェッショナル!」と唸った事例を紹介したい。正直にいえば、退屈極まりない裁判も多いが、法曹三者の彼らはいつも淡々と職務をこなしている。あまり血が通っているとは言いがたい事務的やりとりに終始するケースがほとんどだが、彼らにも「プロ魂」を発揮する瞬間があるのだ。