「いい声」の人は喉以外の場所を使っている

「いい声だな」と人に感じさせるための3つの条件のうち、最も大事なのは、「どこで声が響いているか」ということです。

「声がどこで響いているか」ということについて、考えたことがありますか。声は口から発せられますから、「口の中や喉が響いているのではないか」と考える人が多いのではないでしょうか。

実際に、人間の発声を分析してみると、多くの人が喉のあたりから声を出しています。もっと正確にいうと、喉を響かせて声を出しています。

でも、喉を響かせて声を出しているうちは、人に「いい声だ」と思ってもらえるのは困難です。喉を使って響かせるのではなく、鼻を使って響かせるようにしなければならないのです。

人の好みはさまざまで、もちろん喉を響かせた表現も魅力的かもしれませんが、もっと効率がよいのは体の構造上、鼻、より正確にいうと、鼻腔という空間を響かせる方が効率的で簡単に魅力的な声になります。

私たちは、喉を使って響かせることを「喉鳴り」、鼻を使って響かせることを「鼻鳴り」と呼びます。

なぜ、喉鳴りよりも鼻鳴りの方が良いのか。それをご説明する前に、まずはわかりやすく、誰でも知っている歌手の歌い方を思い出してみましょう。

美空ひばりとジャイアンの歌声は何が違うのか

思い出してほしいのは、美空ひばりさんです。DVDでもYouTubeでも、彼女が歌っているシーンをちょっと見てみてください。

彼女の歌声を聞くと、どんなことに気づきますか? 特に、「どこで声が響いているのか」ということに注目して聞いてみると、彼女の鼻のあたりで声がボワ~ンと響いていることに気づきませんか。

そう、これが「鼻鳴り」です。喉や首のあたりの筋肉の緊張がほとんどなく、安定した響きを生みだしながら歌っていますね。歌だけでなく、彼女がお話しされている時にも注目して下さい。やはり鼻腔が響いていて、口から出ていく呼気の量も一定になっていると感じられると思います。

これに対して、イメージとしてわかりやすいのが、ジャイアンです。アニメ「ドラえもん」に出てくるジャイアンは、いつもリサイタルと称して、がなりたてています。でも、ただ大きな声を出しているだけで耳触りが非常に悪く、のび太やドラえもんは頭を抱えて逃げ回っていますよね。

ジャイアンの歌声こそ、「喉鳴り」の典型です。