口の周辺にある1番大きな空洞といえば?

人間の声は、声帯が振動を起こすことで作られ、共鳴腔で共鳴することで倍音が生まれ、大きくなります。倍音とは、実際に鳴っている音の2~4倍、周波数の高い音のこと。倍音が多い声は明るく響き、倍音が少ない声は通りがよくない、こもった声になりがちです。

体の中には、たくさんの共鳴腔があります。通常は、口の中や喉、鼻腔など、からっぽの空間を使って人間は音を響かせています。この共鳴腔にはそれぞれの役割があって、主に次のように分類されています。

3つの主な共鳴腔
提供=光文社

1、咽頭腔
声帯の上にある空間。共鳴腔として一番最初に機能する
2、口腔
口のなかにある空間。吐く息が出ていくエリアであり、感覚を育てていけばコントロールしやすい
3、鼻腔
鼻の奥にある空間。特に裏声やナ行、マ行、「ン」など母音の「N」の音、裏声を出す時に共鳴させやすい

図表をみてもわかるように、口の周りには3つの空洞がありますが、このなかで、一番大きなものはなんでしょう?

鼻腔ですよね。つまり、鼻腔が最も大きな空洞であり、力みなどにより空間が狭くなりやすい、咽頭腔や口腔で響きを生み出そうとするより、ここを効果的に使うことで、声はもっとよく響き、いい声になるのです。

「ん」と「N」をそれぞれ発音してみよう

結論から先にお伝えすると「ん」ではなく、「N」を発音した時の響きを利用していい声を作ります。

「『ん』と『N』の発音は同じじゃないの?」そう思われるかもしれませんが、ひらがなの「ん」を意識して発音すると喉が締まって硬い印象の音になり、英語の「N」を発音してからその音を伸ばして維持してみると、喉がリラックスして温かい印象の音になっていると思います。

先ほど、鼻腔は「ナ行、マ行や裏声の音を使う際に共鳴させやすい」とお話ししました。鼻腔で響かせることの大切さをもっとよく理解して頂くために、ぜひ玉置浩二さんの歌を聞いてみて下さい。

私が歌手のトレーニングを行う際に、よく、課題曲として使うものに、玉置浩二さんの『メロディー』があります。1996年に発売された曲ですが、いまだに多くの人に親しまれている名曲です。

「Nの響き」に注意して、玉置さんの歌を聞いてみてください。声にまったく濁りがなく、低い音程でも丸みがあり、とても響いていることに気づきませんか。試しに、ご自分で「ん」と発音してみてください。その時、喉はぎゅっと閉じて、絞り出すように発音していませんか?

これが「喉鳴り」の「ん」。