「営業部長」や「支配人」もアルバイトからのたたき上げ

ホテル業は厳しい仕事だ。離職率は高く、人材採用も簡単ではない。いまや国内に40以上の施設を展開するホテルの「営業部長」や「支配人」だが、三宅氏も俵谷氏も振り出しはアルバイトだった。

20代後半で同社の採用試験を受けたという営業部長の三宅氏だが、若い頃は自分探しを続け、大学も中退。遊びに没頭した時代もあったという。

「自分の経歴を隠さず伝えたのですが、当時の社長は面白がって採用してくれました。私は『拾ってもらった』感もあり、この会社や仲間のために頑張ろうと思ったのです」(三宅氏)

撮影=プレジデントオンライン編集部
アールエヌティーホテルズ西日本営業部部長の三宅一平氏

支配人の俵谷氏も、2009年に27歳でアルバイトとして入り、「リッチモンドホテル宇都宮駅前」勤務時代に社員となった。2011年3月11日の東日本大震災では宇都宮市も震度6強を記録。幸い人的被害はなかったが、被災者の対応に追われたという。その後、2011年に「同札幌駅前」、2015年に「同札幌大通」、2016年に「同博多駅前」に異動した後、開業準備室に赴任した。

「朝食」に注力する一方で、館内に「大浴場」はない

筆者は長年、企業取材を続け、人材活用の「ダイバーシティ」(多様性)とも向き合ってきた。以前に比べて進んだが、まだまだ採用においては新卒重視で、中途採用もピカピカの人材を欲しがる会社は多い。一方、同社は“寄り道人材”が入社後に接客技術などを磨き、自己研鑽けんさんする。スタッフは自社の「ホテルブランド」を愛し、パート・アルバイト出身の支配人が生まれやすい土壌がある。

撮影=プレジデントオンライン編集部
フロント横にあるソファスペース。ビジネスホテルらしくない色彩豊かなデザインだった。

顧客重視のリッチモンドホテルの訴求にも課題は残る。例えば「朝食」に注力する一方で、館内に「大浴場」はない。

楽天トラベルの「出張に関するアンケート」(2014年10月29日~31日調査)によれば、ホテル選びのトップ10は、上から順に「価格」「立地」「朝食の質、量」「ベッドの大きさ、寝心地」「部屋の広さ」「接客サービスの質」「楽天スーパーポイントが貯まる」「大浴場の有無」「ホテル独自の会員特典」「アメニティの種類、質」だった。

リッチモンドホテルが注力する「朝食」は3位で、8位の「大浴場」は設置していない。