3人の社員が朝食からアメニティまですべてを決める
リッチモンドの親会社は、ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」を傘下に持つロイヤルホールディングス。グループ会社の食材調達力がハイレベルな朝食を支えている。その内容について、天神西通の支配人・俵谷雅人氏の説明が興味深い。
「当ホテルの場合は、開業9カ月前にできた『準備室』でサービス内容を決めていきました。もちろん本部との交渉はありますが、原則としてその内容は私たち現場のスタッフに任されています。だから各ホテルの朝食が地域色豊かになるのだと思います」
現在、「リッチモンドホテル天神西通」のスタッフは19人。そのうち社員は3人で、残りの16人はパート・アルバイトだ。3人の社員がスタッフの採用から、朝食メニュー、アメニティまでホテルのすべてを決めるという。
手間が多く、コストが上がっても、現場が選ぶワケ
現場が主導するのは朝食メニューだけではない。例えば宿泊客が着る「パジャマ」もそうだ。以前はワンピースタイプが多かったが、「セパレート(上下別)がいい」という利用客の声を反映させ、天神西通ではセパレートタイプとした。スタッフが着用する「制服」も同様だ。女性の場合、ジャケットではなくワンピースを選ぶこともできる。
地方色を打ち出したい朝食メニューならともかく、パジャマや制服の場合は、本部が決めて一括支給するほうが効率的で、コストも抑えられるはず。なぜ、そうしないのか。
「2004年に現在の会社設立当初(※)から『CS向上委員会』を発足させ、スタッフが中心となり、お客さまの満足を高められるよう取り組んできました。パジャマの選択もその一環で、制服は施設の立地イメージやスタッフの働きやすさを優先します。本部は口を出さず、従業員の大半を占めるパート・アルバイトさんが主役となってお客さまに接するという方針で、これらはアールエヌティ独自の企業文化なのです」(広報担当)
本部が決めて一括支給すれば、確かに手間は少なく、コストも下がる。しかし現場には「やらされ感」が出てしまう。一方、自分たちで選ぶことができれば、その職場は「自分たちのホテル」と思える。従業員満足度には大きな影響がありそうだ。
※株式会社アールエヌティーホテルズは、ダイワロイヤルから「ロイネットホテル」の名称で展開していたホテル事業の一部を継承する目的で2004年に設立。2007年からロイネットホテルを「リッチモンドホテル」の名称に変更した。その後に開業した施設も同名で運営している。