毎日欠かさず読む日経新聞の人事欄

静香ママ、さゆりママは2人ともベテランだが、「クラブ モントレイ」の桐島とうかママは、まだ20代の才女。最年少の銀座ママデビューだった。学生時代に起業の経験がある。知り合った学生のなかには、イベントやIT関連で成功している人が何人かいた。ママも代行サービスなどを手がけたが、苦い経験に終わってしまい、心機一転、銀座で働くことにした。

クラブ モントレイ 桐島とうか●学習院大学経済学部卒業後、ホステスの道に進む。銀座の老舗クラブなどで働いた後、2016年より「クラブモントレイ」のママに。

「24歳という若さでママになれた理由はいくつかあると思います。一番大きかったのは、やはり『ママになる!』と、強い気持ちで決めて行動したから。とにかく、あきらめずに続けていたから成功できたのです」

そんな彼女も、銀座の一流クラブのサービスには不可欠の“目配り・気配り・思いやり”は、しっかりと身につけている。そのためには人一倍の精進を怠らなかった。この世界に入ってから日刊5紙に目を通し、とりわけ日本経済新聞の人事欄には気をつけた。

同席したことのある人の名前を見つけると、すぐに連絡した。昇進ならば「おめでとうございます」とお祝いのメール。地方支店への異動の場合は、お祝いの言葉は付けず「体にお気をつけて……」のみ、と書き分ける。20歳そこそこの女の子がしたから、なお効果があった。もちろん、ママになった今も続けている。

お客の愛読書を購読して感想を送る

「銀座のママって、1度顔を見たら覚えているというけれど、私はそんなことなくて、お連れ様も忘れてしまうんです。最初はいただいた名刺に、その方の特徴や趣味、その日の話題をメモしていました。だから、名前と会社はすぐにわかります。いまはスマホのアプリ。しばらく来店されないようなら『ご無沙汰ですね』とメールします(笑)。接客は、突き詰めれば人と人のつながりでしょう」

けれども、通りいっぺんの内容では相手の心は動かない。そこで生きてくるのが、とうかママの年間200~300冊という驚異的な読書量。店で話題に出た本は必ずチェックする。ある大企業の経営者が、愛読書のことを話していたので、すぐ購読して感想をメールで送った。すると、常連客になってくれただけでなく、部下も次々と店に送り込んでくれるようになった。

情報収集力が、人の心を動かしたケースだ。一方で、情報はどんどん開示することも大切だと強調する。

「とても参考になった本に『超一流の雑談力』があります。そこに《提案したことを感謝される》という一節がありました。持っている情報を開示したり提案をしたりすると、それに対して意見がもらえます。すると、自分の視野が広がって話題も増えるし、会話もはずむようになるんです」

夜の銀座のクラブに集う各界の名士たちとの会話。そして、縁に触れてひもとく本。その繰り返しがママたちの磨き抜かれた接客につながっている。だからこそ「また、そこで飲みたい」とファンが思う。それもまたママたちの気配りなのだ。

▼とうかママおすすめの本
世界中の億万長者がたどりつく「心」の授業(Nami Barden、河合克仁著 すばる舎)
インド東部の街「チェンナイ」に、世界中から超一流の人間が集まり「心の授業」を受けるというワンワールドアカデミー。人材教育コンサルタントの著者が、そこで出会った講師と共著で伝える授業の中身。
超一流の雑談力(安田 正著 文響社)
「雑談」こそは、ビジネスや人間関係の入り口で、信頼を築く大きな武器になる。ビジネスコミュニケーションのコンサルタントである著者が、雑談をスキルとして確立させ、読者に紹介したベストセラー。
メンタリストDaiGoの幸せをつかむ言葉(メンタリストDaiGo著 セブン&アイ出版)
40万人以上のフォロワーを持つ著者のツイッターから、「何気ない日常にかくれた本当に大切なものに気づくための言葉」を、200余りまとめた本。めくっていると言葉が心に留まりポジティブになれる。
(撮影=増田岳二)
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