医師免許があってもいい加減な主張をする人はいる

大学教授やクリニックの院長が推薦していると信用する人もいるでしょう。ただ、そうした「専門家」がきちんとした臨床的証拠を元に話しているとは限りません。同じ医師として恥じ入りたくなりますが、医師免許を持っていても、いい加減なことを主張する人はいます。医師のほとんどはきちんとしていると信じていますが、数多くいる医師(日本だけで30万人以上)の中にはデタラメを言う人もいるのです。

どこかのメディアが「酢納豆で病気が治る!」という記事の企画を立てたとします。まともな医師に話を聞きにいっても「酢納豆で病気が治るというエビデンスはない」か、よくて「一部の病気に効く可能性がないとは言えない」くらいのコメントしかしてくれないでしょう。これでは記事になりません。しかし、中には「酢納豆はアンチエイジングにいい」、「酢納豆は高血圧にも効く」などと景気よく断言してくれる医師もいます。

本当に食品が効くと考えているなら、一般読者向けの記事にコメントするだけでなく、他の専門家に向けて学会で発表したり、医学論文を書いたりできるはずです。しかし、私の知る限りでは酢納豆の効果についての論文はありません。

そうした医師は医学論文を書かなくても、一般向けメディアに載ることで名前が売れ、クリニックが繁盛するという利益が得られます。メディア側にも、医師が期待通りのコメントをくれることで手軽に記事が書けるという利益があります。両者は「Win‐Win」の関係です。

こうして、健康雑誌などに「酢納豆で病気が治る!」というフードファディズムを助長する記事が載ることになります。テレビ番組でも同じことでしょう。不利益を被るのは、不正確な情報に惑わされる読者や視聴者なのです。

ナッツの糖質さえ気にするのは「フードファディズム」

特定の食品が「健康によい・病気が治る」とは反対に、「健康に悪い・病気になる」とするフードファディズムもあります。もちろん、砂糖入りの清涼飲料水を大量に飲めば糖尿病になりかねませんし、赤肉や加工肉のとりすぎは大腸がんのリスクを上げます。過剰摂取すれば健康に悪い食品はありますが、その影響を過大評価するのはフードファディズムです。

極端な糖質制限もフードファディズムです。バランスを保ちながら適度に糖質を減らすのではなく、糖質こそが様々な病気の原因であり、減らせば減らすほど体によいと信じている人たちがいます。糖質制限にも様々な流派があり、「糖質ゼロ」を目標に掲げている一派もあります。そうした一派の人たちは、一般的な基準からいえば低糖質なナッツの糖質さえ気にします。健康になることよりも、糖質を避けることが目的になっているかのようです。