「6割は『蘇生をしながら搬送する』と答えた」
読売社説は「蘇生を望まないという意思を示していた高齢者らが自宅や施設で心肺停止となり、気が動転した家族や関係者が119番通報した後、到着した救急隊に蘇生中止を要望するケースが目立つ」とも指摘し、次のようなデータを挙げる。
「消防によって対応は分かれる。あらかじめ対応指針を定めていたのは約300機関で、このうち3割は『医師の判断などに基づき蘇生を中止できる』としていた。一方、6割は『蘇生をしながら搬送する』という内容だった」
その上で「『救命』を使命としてきた救急現場の戸惑いがうかがえる」と書く。
救急隊が戸惑うのは無理もない。終末期にどんな医療を施すべきなのか。生命倫理にかかわる問題だけに、根底には重くて深く、厳しい事案が横たわっている。問題を解決するめどを見つけるには、まず終末期医療の在り方について私たちが考え、理解していく必要がある。
あなたは「延命治療」を受けるか、それとも拒否するか
いまや日本社会は世界でもまれな高齢化に直面し、「人生100年時代」と言われる。しかし人生100年と喜んではいられない。長寿社会では老いや病気の問題、命の大切さをより深く考えなければならないからだ。だれもが最後にたどり着く死について正しく認識しておく必要がある。裏を返せば、それだけ終末期医療が大きく問われているわけだ。
具体的に問いたい。いかなる治療を受けようと、死が避けられないという終末期に至ったとき、あなたは延命治療を受けるのか、それとも拒否するのか。
延命治療と何か。人工呼吸器の装着ほか、代表的な延命治療にはおなかに穴を開けて栄養剤を胃に送る胃瘻、人工腎臓(透析装置)にかけて血液から老廃物を取り除く透析療法がある。薬物の投与、化学療法、輸血、輸液も延命治療に該当する。