8年前の福島原発事故の教訓は生かされなかった

「墜落事故はその発生条件(原因)が極めて特異であるが故に、日頃見過ごしがちな現代の科学技術の危険な陥穽かんせいをさらけだすことになる」

ノンフィクション作家、柳田邦男氏(83)は『マッハの恐怖 連続ジェット機事故を追って』(初出はフジ出版社、のちに新潮文庫)でこう書いている。

写真=時事通信フォト
夜からの激しい雨が予想される中、夕方にようやく始まった屋根の修復作業を見詰める男性(右)。この地区は古い住宅が多く、「被害が多いのはそれも影響しているのではないか」と話した=2019年9月15日、千葉県館山市の布良地区

柳田氏はNHK社会部の記者時代、34歳でこれを書き上げ、翌年の1972年に第3回大宅壮一ノンフィクション賞を受けた。受賞後、独立し、航空事故から医学・医療、原発、災害、公害などさまざまの分野で「人間の生と死」「人間と技術」「人と組織」について取材・執筆活動を続けている。

東京電力は柳田氏のいう「現代の科学技術の危険な陥穽」にはまったままである。

今年9月9日に関東地方に上陸した台風15号では、大規模停電からの復旧に甘い見通しを立て被災者を疲労困憊させた。千葉県では強風で数多くの電柱が倒れ、停電が長期間続いた。8年前の福島原発事故の教訓は生かされなかった。