当初、東電は「11日中に全面復旧する」と発表した

東電は当初、全面復旧がすぐにできると判断して見通しを発表した。しかし、その見通しが間違っていた。

東京電力パワーグリッド(東電PG)の塩川和幸技監は、9月12日の記者会見で「被害想定の見通しが甘く、反省している」と頭を下げた。

東電PGは大規模停電が起きた翌日の10日時点で、千葉県内で最大64万軒(当初の予想)だった停電軒数を11日未明までに12万軒に縮小し、「11日中に全面復旧する」との目標を示した。しかしその後、全面復旧の見通しを13日以降に次々と先送りする事態となった。

東電PGは東京電力ホールディングスの子会社である。2016年4月、東電の会社分割で発足した送配電の事業者で、関東地方と山梨県、それに静岡県東部が業務エリアだ。

千葉市長が「楽観的な見通しは被災者のためにならない」と苦言

東電PGによれば、全面復旧先送りの原因は、各家庭に電気を送る電線の被害が想定以上にひどく、復旧作業が長引くことが判明したことにあるという。一部だけと思われていた送配電線の破損も、複数の箇所に及んでいた。至るところで木が倒れて道路が通行できず、現場に近づくこともままならなかった。

それにしても東電の「11日中の全面復旧」という目標はずさんそのものだ。この目標を伝え聞いた被災者らは、一度は安心した。だが、11日が過ぎても電気は来ない。猛暑日や熱帯夜が続くなか、エヤコンや冷蔵庫が使えず、被災者は疲労困憊となった。

千葉市の熊谷俊人市長は「楽観的な見通しを発表することは被災者のためにならない。きちんとした情報を出してほしい」と東電に訴えた。

なぜ東電は甘い見通しをそのまま公表したのか。

「被害が想定外」というのは言い訳にすぎない。その場を体裁良く繕うことだけを考え、慎重さを欠いたのかもしれない。そうだとしたら公共事業を担う者として余りにも身勝手である。電気があって成り立つ私たち国民の生活を理解していない。