人だけではなく、哺乳類や鳥類からより下等な動物まで、睡眠行動を持つことがわかってきた。『動物はいつから眠るようになったのか?』の著者で、分子生物学・分子遺伝学者の大島靖美氏(九州大学名誉教授)に、その睡眠の特徴について聞いた。

Q. トラの睡眠時間は15時間、キリンはたった5時間?

動物の睡眠時間を決める重大要素

ライオンやトラの平均的な睡眠時間は15時間、キリンは4.6時間、野生のアフリカゾウは3.3時間といわれます。この差をもたらすのは、まず食性です。睡眠時間は、肉食動物、雑食動物、草食動物の順に短くなるのです。

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肉類は栄養価(エネルギー量)が高いので、常にエサを探しまわる必要がありません。特に、ライオンやトラなど大型の肉食獣は生態系の頂点に君臨し周囲に敵がいないため、自然界でも仰向けで脚を広げ、のびのびと寝る姿が観察されています。

一方、大型草食動物のキリンやゾウは睡眠時間が短く、ほとんど立って寝ています。植物は栄養効果が低く、大量のエサを常に探して食べなければいけない。それと周囲に敵が多いことが、睡眠時間やスタイルを決定しているのです。エサを探す苦労も身の危険もない動物園では、インドゾウは5~6時間寝るという報告があります。しかし、立って寝る姿勢が大半であることには変化はありません。