AI時代到来で「足で稼ぐ営業」は消えてしまうのか

時代潮流として、実際に人が動いて顧客とコンタクトをとり、需給を調整しながら販売業務をこなしていくというやり方から、パソコンやウェブ、あるいはスマホなどによるネットを通じた顧客との情報のやりとりで、ある意味「事務的に」販売業務を消化していくパターンへとシフトが起こっていることの反映だと考えられる。

本川裕『なぜ、男子は突然、草食化したのか 統計データが解き明かす日本の変化』(日本経済新聞出版社)

ネットを利用した新しい流通形態というべき「B2C」におけるアマゾンや楽天、「B2B」におけるミスミ(ウェブカタログ、ウェブ受注が特徴の機械部品商社)、「C2C」のメルカリ(個人間取引のオークションサイト)に代表されるネットビジネスやシェアリングエコノミーといったビジネスモデルが、こうした潮流変化を体現しているといえる。

生産面でも、ITやネット処理を担当する生産関連事務職の増加が著しい(2005〜10年には中分類で第2位の増加率)、生産と販売の両面から「ネット時代」が本格化しているのである。

このように見てくると、躍進職業の2位に、ケア関係職業ではなく、「営業・販売事務職」という一見地味で馴染みの薄い職業が登場したことの意味は、やはり、大きなものがあると判断できよう。

なお、図表2の衰退職業のトップに「外勤事務従事者」、5位に「機械検査従事者」が上がっているのもネットを通じたモニタリング・システムが発達したことによる影響と見られる。

さらに役員以外の一般の管理職を指す「その他の管理的職業従事者」の減少率が大きいのも、インターネットの発達で企業組織がフラット化しているためとも考えられる。

こうした職業変化に表れている「ネットの時代」は今後も持続的なのか。また「ネットの時代」が「ケアの時代」とは違ったどのような新しい人生観を生んでいくのか。さらに、ネットと人工知能(AI)が組み合わされた「AI時代の到来」により多くの職業が不要となると大きな話題となっているが本当なのか。これらを見定めるためには、今後も、職業別就業者数の動きから目が離せない。

【関連記事】
トヨタの営業マンが売れないときにやる事
バカでキレる子を量産する「ネット依存」の怖さ
なぜ日本の貯蓄率は韓国より低くなったか
メガネ業界が「儲けウハウハ」のカラクリ
富裕層は「スマホ」と「コーヒー」に目もくれない