パワーポイントで資料をつくらない5つの理由

ご覧のとおり、要点を文字でまとめただけのシンプルなもので、分量もA4用紙1~2枚程度に収められている。

企画書なんてものは、この程度の内容でよいのだ。これでも打ち合わせや会議において、十分に通用する。というか、広告会社を辞めた後、こうした企画書のまとめ方をして困ったことは一度もない。「なぜパワーポイントで書かないのですか? 失礼です」なんてことを言われたことも皆無である。

私がなぜパワーポイントで資料をつくらないかといえば、理由は以下の5つだ。

【1】作成に時間がかかる
【2】印刷にも手間がかかるし、膨大な量の紙とインクを使う
【3】ページ数が多いと、もう一度読みたい部分に到達するのに手間がかかる
【4】ペラ1、ペラ2程度で趣旨は十分に伝えられる
【5】実は多くの人が上記4点について認識しており、パワーポイントの資料にこだわることの非合理性について、作り手も読み手も内心では気づいている

ぶ厚いパワポ資料は「無駄な気配り」を具現化したもの

2015年に起きた電通社員の過労自殺事件で改めて注目されたように、ほんの数年前まで、広告業界では慢性的な長時間労働が蔓延していた。

広告業界は、はたから見ればクリエーティブで華やかな仕事に映るかもしれない。しかし実際は、クライアントに対して滅私奉公することが求められる、サービス業社畜の集団という側面も強い。

だからこそ「お客さまに対しては徹底的に誠意を見せなくてはならない」という思考にドップリと染まっており、あらゆる場面でクライアントに過度の気配りをしてしまうのである。そうした姿勢のひとつの表れが「資料はパワーポイントでつくる」という文化なのだ。過度に気配りするあまり、「手間ヒマかけて、つくってきましたよ!」とアピールすることに意識が向いてしまい、無駄にページ数を増やしたり、過度にデザインに凝ってしまったりするのだ。

とはいえ、多くのクライアントは「とにかく企画趣旨がバシッとわかりやすく書いてあれば、それでじゅうぶん」だと考えている。少なくとも「どうしてパワーポイントでぶ厚い資料をつくらなかったのだ! 失敬な!!」などと怒ることはない。