『週刊文春』の異常なあきらめの悪さ
そこで羽柴弁護士が、本の印税専用の振込口座を開設し、被害者の遺族がいつでもチェックできる仕組みをつくる。両親が印税には1円たりとも手を付けず、全額を賠償に充てていることが、この口座で確認できるのだ。
3家族にせめてもの償いをする見通しが立ったことで、両親はついに手記の出版を決意した。
大新聞やテレビのキー局をはじめ、あらゆるマスコミが、神戸に精鋭の記者を送り込み、両親の所在をつかんで話を聞こうと、激しい報道合戦を繰り広げた。その中でなぜ、『週刊文春』だけが両親と接触でき、独占手記を取るに至ったのか、とよく聞かれる。結局は、森下記者の粘りと「あきらめの悪さ」が他社の記者を凌駕し、熱意と誠意が両親と代理人の心に届いたということだろう。
(写真=時事通信フォト)