超手軽! でも効果は絶大!
大分トリニータの社長を退任後、観光庁長官を経て、大阪観光局長を務める溝畑宏氏の健康法は、30年以上通っているという週に1度のバッティングセンターだ。
「小さい頃は『巨人の星』にあこがれて大リーグ養成ギプスを自作するほどの野球少年でした。これまで、大阪も含め地方都市で勤務することが長かったですが、どんな都市に行っても、バッティングセンターを見つけては足を運んでいましたよ」
溝畑氏が健康法としてバッティングセンターを選んでいるのは、野球好きという理由以外に運動時間が決まっていることが挙げられるという。
「出張先のどの市街地にもありますし、大抵は一回20球ほどと決まっているので忙しいときにも足を運べ、値段も手頃なのに、打てた際は爽快。自分の体の調子も確認できます」
ここまで紹介した経営者たちの健康法に対し、溝畑氏の持論は「教科書にない異色の健康法」と言えそうだ。
精神科医で、ベストセラー作家でもある樺沢紫苑氏によると、バッティングセンター健康法には、本特集の根底を貫く大きなポイントが隠れている。
「健康法と聞くと、食事や睡眠、運動などをバランスよくすべて満たそうとしがちですが、何より大事なのは自分なりの休養パターンを持つこと。自分特有のものであれ、何も健康法を持っていない人が一番ダメです。溝畑さんはバッティングセンターに30年以上通っていることからも、この健康法が自身の健康法として確立されている点が大変評価できます」
また、バッティングの運動がもたらすメリットは現代のビジネスパーソンには特に大きいという。
「パソコンなどによる長時間の座り作業は体が歪む原因になります。バッティングは体を回さなければ振れません。体の軸が整うので歪みを解消する効果も期待できます」
いつも二十数分だけバットを振るのが“溝畑流”だ。
「仕事で嫌なことがあったときは、そいつの顔を思い出して打っていることもあります(笑)。バットを振るときも『このやろう!』とか『ばかやろう!』とか、もう胃とか頭にたまったものをすべて吐き出すように声を出してます」
この声出しにも脳科学的には合理性があるというから驚きだ。樺沢氏は続ける。
「腹式呼吸による発声はセロトニンを活性化するため、ストレス発散効果が得られます。同じ理由としてカラオケも実はおすすめの健康法です。ただし、注意点があります。声を出すのはそのときだけにとどめること。何回もストレスの対象(たとえば部下や取引先など)の話をし続けると、その思考を強化してしまいます。ストレスの原因は一回で吐き出してしまうことが大事です」