トライアスロンで、判断が速くなった
クルマや電車……。快適に移動する手段を提供する業界に携わる経営者は、意外にも自らの体を動かすことを好んでいた。経営者の1週間の平均運動時間のデータを見ると、2~3時間以上運動する人の割合は一般人が58%に対し、71%。経営者には体を動かす人が多いのだ。
「脳科学の研究で、週2時間以上の運動をすると認知症発症率が2分の1以下になることがわかっています。ほかにも、運動には免疫力を高めたり、新陳代謝を活発化させるなどの効果があり、日々健康な状態で最適な判断が求められる経営者に運動は必須と言えるでしょう」と精神科医で、ベストセラー作家でもある樺沢紫苑氏。
アンケートでは「パーソナルトレーニングをしている」という社長が目立った(フェイスネットワーク・蜂谷二郎氏、ファクト・菅在根氏ほか)。「シニアのアメフトリーグで週1回ほど現役選手として活動」(アクティブ・ギア・高野知司氏)といった回答もあった。
その中でも、特に激しい運動を健康法として実践する社長がいる。メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長だ。彼は、年に1回参加するトライアスロンと自宅周辺のジョギングが習慣となっている。
「トライアスロンは1.5キロメートル泳いで、40キロメートルを自転車で、10キロメートルを自分の脚で走って合計51.5キロメートル。これをもう8年続けています」
始めたのは40代のとき。きっかけは何だったのか。
「子どもがまだ7歳のときでした。一緒に公園に遊びに行ったときに、たまたまセミの抜け殻が木に付いていて、『お父さんが取ってやる』とジャンプしたんです。その瞬間、全身に電気が走り、ストンとそのまま落ちて転げたんです。これは衝撃でした。体がもう自分の思っているのと違うんだなと強く実感しましたね」
当時は会食が多かったこともあり、体重が今よりも10キログラム以上あり、悩んでいたという上野氏。
「それを機会に加圧ジムに通い始めました。すると、3カ月で、あっという間に8キログラム痩せたんですよね。その後たまたまトライアスロンの第一人者の方と出会うきっかけがあり、誘われて今に至ります」
トライアスロンに取り組むため、ジョギングを始めたのはこの頃から。
「海外出張に行くたびに、走るようになりました。ドイツでの会議が10時前後なので、朝の時間は空いています。知らないところを自分のペースで、小走りからだんだん走るペースにしていきます。走るのは時差ボケにも効きます。出張が年200日を超えるので、そのたびに走っていることになりますね」