どうやって月5万5000円の赤字をほぼ解消したのか
本来なら、家計簿をつけながら「必要なもの」と「必要でないもの」を見極め、「必要でないもの」への支出を、時間をかけて減らしていくことが家計改善の基本となります。
しかし、栗原家の場合は、緊急手術的な対策が必要なため、思い切った固定費の見直しを考えてみました。水道光熱費や通信費は、すでに契約を見直してあり、これ以上下げるのは難しいと感じましたので、「車を手放すこと」を栗原さんに提案しました。
「新居に引っ越す前は、駅から遠かったので車は必需品でしたが、いまは幸い駅から徒歩圏内。戸建てを買ったのに駐車場代がムダだなと思っていたので、まずは車を手放すことにします」と、栗原さんも納得して決断してくれました。
このほかの固定費として、食費のなかの「お菓子の定期宅配サービス」と、教育費のなかの「ピラティス教室」もほとんど通えず休眠状態だったため解約することにしました。ふたつ合わせて1万円の削減です。
また、クレジットカードの請求が次の月に来ることで家計のやりくりが難しくなっていたこと、さらに交際費と娯楽費が「家計費から出すべき支出」と「おこづかいから出すべき支出」が混じっていることなど、「家計の見通し」が悪い点も気になりました。
そこで、クレジットカードは極力使わないようにするとともに、おこづかい制を導入し、自分が楽しむ費用を家計の支出と区別することにしました。
するとカード決済分は1万5000円減、交際費は8000円減、娯楽費は1万8000円減できました。
トータルの削減額は、5万4000円にもなり、最終的に、毎月の家計は「ほぼトントン」まで持ち直すことができました。さらに、「必要でないもの」の支出カットを、他の費目でも取り組めば、毎月貯金することもできそうです。
「いろいろな誤算がありましたが、毎月の家計が安定してくれば、住宅ローンも不安なく返済できることがわかりました。一つひとつ実行していきます」
栗原さんはそう力強く話してくれました。
10月の消費税増税を前に駆け込み購入する際の注意点
実は今回の家計の見直しでは、栗原家の将来を考えて、支出額を増やした費目もありますそれは保険への加入です。栗原家は住宅の購入の際に加入した、「団体信用生命保険」(ローンを払っている人に万が一のことがあった場合、その後の支払いが免除される)があるので、「生命保険は不要」と考えていました。
しかし、これだけではその後の家族の生活費には何の保障もありません。そこで、貯金も少ない今、万が一のときに「毎月一定額」が支払われる「収入保障保険」で、リスクヘッジをしておく必要性を説明しました。
住宅を購入するときには将来のことまで視野に入れて、検討することが必要です。いくら「賃貸物件と違って、払った分は自分の資産になる」とはいえ、ローンを払えなくなったら、家ごと手放すことになってしまいます。
今後、10月の消費税増税を控え、駆け込みでの購入を考える人が増えてくると思われますが、「いまの家計でローンが払えるか」「繰り上げ返済も活用しながら、60歳までに完済できるか」などを冷静に考えたうえで、「夢のマイホーム」を実現してもらえればと思います。