旅先でひと目惚れ、今や第一人者

昔ながらの「切手・コイン」をはじめ、何かを収集する人(○○収集)は男性に多いのですが、ここでは珍しい「モラ」を収集する鈴木誉志男さん(サザコーヒー会長・ひたちなか商工会議所会頭)の話を聞きましょう。

サザコーヒー会長の鈴木誉志男さん。パナマの先住民族がつくる「モラ」に魅せられ、その道の第一人者に。2018年、東京で収蔵品の展覧会を開いた。

「もともとモラはコーヒー産地の手芸布でパナマの先住民族・クーナ族の女性がつくるものが有名です。1974年、私はコーヒー屋として南米コロンビアに視察と商談に行き、コーヒー農園の応接間に額装されていた極彩色の布に出合い、ひと目惚れしたのです」

以来、産地訪問のたびに買い集めたモラは1200枚に達し、鈴木さんは今や日本におけるモラ収集の第一人者になっています。

「モラの魅力は日本の浮世絵に似ています。長年鎖国状態で世界に知られていなかったものが『再発見』され、モダンアートとして評価が高まったことです。サザコーヒーは世界中から良質のコーヒーを仕入れて販売しますが、モラだけは絶対に売りません(笑)」

単価の低いカフェ探訪で学生時代の思い出をたどる人もいます。そんなカフェめぐりには、地域に根づく個人経営の店がおススメです。筆者は今春、千葉県鴨川市の個人店を訪れました。今も美しい女性店主は「若い頃は大変な美人で、マドンナ的存在だった」(常連客)。海の近くの店で「磯トースト」という海苔を載せたトーストもあり、店内には、常連客が長年土産で渡したキーホルダーが多数飾ってありました。一人旅と同様、地域の風土に触れて、地域住民と交流する経験は、脳内活性化にもなりそうです。

最後に一言。人と交流する趣味でも、同じ仲間と長年……が心地よい場合と、マンネリ化する場合があります。交流のピークが過ぎたら、距離を置いてはいかがでしょう。人間は1人では生きていけませんが、群れないで1人を楽しむ意識も必要です。年を重ねるにつれて「孤独力を高める」のも、器を広げる意味では大切に思います。

(撮影=永井 浩)
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