「あれをやれ」では人は動かしにくい

今は、組織からの「これをやれ!」「あれをやれ!」という目標設定では、なかなか人を動かしにくい時代だ。重要なのは、本人が「目標を自分事として捉えられるか」であり、目標を自分事に捉えるためには、自分自身で目標を宣言することが必要だ。

しかし、ただ目標を宣言させるだけでは、独りよがりな行動に繋がってしまうのも事実。

そこで使えるのが、本人自ら目標を宣言し、達成に向けて主体的な行動を促すコーチング手法「GROWモデル」である。

相手が動き出すための「質問」

GROWモデルとは、相手に対して、以下のフレームに沿って質問を繰り返すことで一緒に計画を立てる手法だ。

まず、相手の「目標」を確認し、「現状」に目を向けさせ、「資源(活用できるリソース)」に気づかせることで「選択肢」の幅を広げさせ、自ら主体的に具体的な行動を選べるように導く。

上図のような質問を重ねていくことで、質問されたほうは段階的に目標を“自分事”に置き換え、目標達成の意志につなげていける。

ポイントは、質問を通して、相手に考えさせ、言わせることだ。相手が答えないからと急かしてしまうのは禁物だ。時間をかけてでも相手と向き合い、相手の答えが的を外れていた場合も一旦受け止めたうえで、自分の意見を伝える。その繰り返しを経て、共通の目標が生まれ、行動につながる。

サッカー日本代表を経験した本田圭佑氏は、自分で立てた目標を宣言することで、自分へプレッシャーを与え、それを原動力に行動している。GROWモデルは質問をしてくれる他者がいない場合でも、自分自身へのコーチングとして使えるスキルである。自ら主体性をもって働き、またメンバーにも主体性をもって動くことを上手にリードできる人は、仕事で結果が出やすいし、またあの人と働きたいと思われることは確実だ。

三坂 健(みさか・けん)
HRインスティテュート シニアコンサルタント
慶應義塾大学経済学部卒業。安田火災海上保険株式会社(現・損害保険ジャパン日本興亜株式会社)にて法人営業等に携わる。退社後、HRインスティテュートに参画。現在は常務取締役兼シニアコンサルタント。経営コンサルティングを中心に、教育コンテンツの開発、人事制度設計、新規事業開発、人材育成トレーニングなどを手掛ける。
(写真=iStock.com)
【関連記事】
アイリスオーヤマ社員が全然辞めないワケ
会社が絶対手放さない、優秀人材6タイプ
富裕層が子供の教育で重視する4つのこと
富裕層は「スマホ」と「コーヒー」に目もくれない
「定時に帰る」で社長になった人の共通点