人は「知らないもの」を毛嫌いする

人は、「知らないから」という理由で反対してしまうものだ。わかりやすくいってしまえば、陰でコソコソ動いている人は反感をもたれやすいが、わかりやすく旗を振っている人は好感を得やすい。

HRインスティテュート『全員転職時代のポータブルスキル大全』(KADOKAWA)

旗揚げ力は、市場から人を集めたり、リソースを確保したりするうえでも重要だ。たとえば、ホンダが1986年にビジネスジェットの研究・開発をスタートさせる際、「空を自由に移動できるモビリティの提供」という創業当初からの夢を高らかに掲げた。そしてその夢に共感する人が、ホンダの旗の下に集まり、今につながっている。

旗揚げには覚悟がいるが、裏を返せば、旗揚げによりあなたの覚悟が相手に届く。あなたが成し遂げたいことが一人で完結できないものならば、まずは高々と旗を揚げるのだ。旗を揚げてスタートし、結果的に失敗しても、応援してくれた人たちは悪く思わないだろう。

気まずいことを声に出せるか?

「あの人と一緒に働きたい」と思う人の特徴その2は、「本音ブッコミ力」だ。これができる人は、最初は驚かれる(あるいはちょっと引かれる)かもしれないが、ゆくゆくは周囲の信頼を勝ち取る。

たとえば、私が経験したあるグループワークでのアウトプットでの話だ。時間をかけてメンバーと議論を重ね、客観的な事実をもとに根拠を整理し、結論をまとめた。最終発表の準備をしているときにアドバイザーが来て、明るくこう言った。

「それ、全然おもしろくないな!」

メンバーは当惑し、混乱したが、「おもしろくない」という評価を誰も否定できなかったため、コメントを受け入れ、これまでつくりあげたものを一旦壊すことにした。

すると、壊したものと新しいアイデアが重なり合い、結果として、斬新かつ強固なアウトプットが生まれたのである。クオリティは跳ね上がった。

このアドバイザーが持っていたスキルこそが、「本音ブッコミ力」だ。当然、発言の直後はメンバー全員が一様にギョッとしたし、時間が止まった。しかし、フリーズ状態から醒めた私たちが感じたのは「だよね……やっぱりこれ、おもしろくないよね……!」ということだった。

仕事は油断すると既定路線の踏襲になりやすい。それなりにまとめた提案が、本当に価値があるものなのか、自問自答する視点が必要だ。もし違和感があったら、破壊と創造にチャレンジしてみるべきだろう。そのために必要なのが、本音ブッコミ力だ。