エンゲージメント・リーダーの「能力」

次に、部下をエンゲージするためには、上司としてどのような「能力」が求められるか。私がクロトンビルで教えていた内容を踏まえて紹介しましょう。

世界基準で考えてみれば、エンゲージする対象となる部下は、実に多様性に満ちた人たちになります。人種や宗教、国の文化や習慣、基本的な価値観など、さまざまな変数の掛け算によって出来上がる多様性は、計り知れなくなります。

そのような条件下で上司として求められる能力を一言で表せば、「多様性を生かす包容力」と言うことができます。

包容力を具体的に定義すれば、「組織の目標を達成するために社員間の相違を積極的に受け入れ、それらをうまく調和させる力」です。多様性は、「組織に属する社員間の相違の幅」を表しますので、多様性が増すほどに、求められる包容力も増すことになります。

この多様性を生かす包容力を身に付けることができれば、部下に対するエンゲージメントが高まり、部下の会社に対する忠誠心やコミットメントも高まります。

「多様性を生かす包括力」チェックリスト

最後に、「多様性を生かす包容力」が身に付いているかどうか、次の各項目をチェックリスト代わりに自己点検してみてください。

「多様性を生かす包容力」のチェックリスト
□ 部下とのつながりを大切にし、チームを鼓舞している
□ 部下それぞれの個性を尊重し、独自の関心事に訴えられている
□ 1人の個人として部下に関わり、信頼を築くことでチームとの一体感をつくれている
□ 部下を元気付け、より大きな成功への意欲を持たせられている
□ 個人や文化の相違を理解し称賛する環境を促進できている
□ 価値あるフィードバックや一貫したコーチングを行い、部下の成長を促せている
□ 部下を創造的に評価し、個人やチームの実績を認識する機会を見つけている
□ 議論を盛り上げるような思慮深い質問を尋ね、新しいアイデアを受け入れている
□ 部下からの微妙なメッセージを捉え、さらなる情報や説明を積極的に求めている
田口 力(たぐち・ちから)
上智大学グローバル教育センター 非常勤講師
1960年、茨城県生まれ。83年早稲田大学卒業。政府系シンクタンク、IT企業の企業内大学にて職能別・階層別研修や幹部育成選抜研修の企画・講師などに従事。2007年GE入社。14年に退社し、TLCOを設立。04年、一橋大学大学院商学研究科経営学修士コース修了(MBA)。
(写真=iStock.com)
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