「失敗は糧」を実践できない人は多い

部下が持っている知識や経験、スキル、アイデアや熱意を、積極的に会社に投資してもらうためには、そのための取り組みのみならず、部下の知識や経験、創造力などを増強するための取り組みも同時に必要です。

それを推進するには、失敗を否定的に捉えるのではなく、イノベーションや改善を補完する教材であると捉えることが大切です。

「失敗を冷静に分析し、学習や成長の糧にすべき」という議論は大昔からありますが、実践できている人(組織)はごくわずかです。GEのように、失敗に対して報償を与えている会社は少ないのではないでしょうか。

しかし、こうした土壌があってこそ、人は大きな学びを獲得する機会に恵まれるのです。

エンゲージメント・リーダーの「特徴」

部下育成の土壌としてのエンゲージメントを高めるために、上司としてもつべき行動特性・能力について考えてみましょう。

GEクロトンビルの研修の中で、本社執行役員とその候補者を対象とした最上位のクラスは、年1回、3週間連続で開催されます。世界中から選抜された35人がニューヨークのキャンパスに集まり、CEOから出された課題に取り組みます。

クラスの参加者は、2週目に3~4人に分かれて世界中に飛び、インタビュー調査をします。その週末にニューヨークに戻り、3週目にはクラスとしての結果をまとめてCEOにプレゼンテーションを行います。

2009年のクラスに与えられたテーマは、「21世紀のリーダーシップとは」というものでした。参加者は世界110カ所の有力な企業や公的機関を訪れ、それらの組織が将来を担う人材をどのようにして育成しているか調査しました。

その結果として、「エンゲージメント」が次世代リーダーの必須スキルになるということが改めて確認され、21世紀のリーダーシップ像を象徴する言葉として「エンゲージメント・リーダー」が提案されました(下記図表1参照)。

世界基準の「部下の育て方」』(KADOKAWA)より

この提案では、これからのリーダー像として6つの特徴を持つ人物像が描かれています。それぞれの特徴は、3つずつの「行動特性」で説明されています。図中では、エンゲージメントに関わる単語を太字で表しています。

このクラスの参加者のうち日本担当のチーム4人は、トヨタや武田薬品工業など日本を代表するグローバル企業や大学を訪問し、そこでのインプットがこの提案内容にも生かされています。世界基準で考えたときのエンゲージメント・リーダー像についての、ひとつの参考として見てください。