研修シーズン真っただ中。女性の中には、研修や仕事、昇進の機会に不公平を感じる人もいるかもしれません。人事と組織の専門家である中原淳先生が、日本企業の研修の問題点と仕事の機会に男女の不公平が起きるメカニズムを解説します。

日本はなぜ新人研修ばかりやるのか

女性社員の中には、男性社員に比べて「研修の機会が少ない」「仕事の機会が与えられない」といった不満があるようです。実態はどうなのか、違いがあるとしたら何が原因なのかを考えてみましょう。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)

まず、研修の機会についてです。私は、研修機会はそれほど男女差があるとは思っていません。むしろ問題は、日本企業の場合、異常と言えるほど新入社員研修に力を入れ過ぎていることです。新入社員研修以外の研修機会は極端に少ないのです。もっと実務担当者の研修に力を入れないと、社員のモチベーションが維持できず、離職にもつながっていきます。

新入社員研修が不要とは言いません。しかし、組織の一員になるにあたっての意識面の研修などはなくてもかまいません。それに、どんなに豪勢な新入社員研修をやってもすぐに忘れられてしまいます。

企業が力を入れるべきは実務担当者の研修です。自分で学びたいメニューを選べるカフェテリアプランや、学びたい人には5万円、10万円の費用を肩代わりする方法で支援すればいいと思います。

海外の学び方は全然違う

ちなみに海外では新入社員研修はあまり見かけません。社会に出る準備はインターンやNPOで体験してくるので、日本のような新入社員研修の概念がないのです。

ホワイトカラーは基本、専門知識・スキルを持っている人たちとみなされます。専門知識・スキルは大学院で学びます。それも、大学から大学院へストレートに行くのではなく、大学を卒業してある程度働いた後、転職する際や管理職に上がるタイミングで、いったん仕事を辞めて大学院で学び直すケースが多いのです。そしてMBAや理科系の修士課程であるマスター・オブ・サイエンスを修め、再び就業するのが一般的です。海外の大学院で学ぶ場合はすべて自腹ですし、日本よりもずっと学費が高くなります。