出産後に育児休暇を取った男性店長
2店舗目の「すき焼き専科」で立ち上げから勤務していた従業員Kさんは、子どもが生まれたときに男性の育児休暇を取得しました。
本当は「2~3カ月育休取得したら?」と勧めていたのですが、当時彼は店長で、責任感も人一倍ありました。幸せを決めるのは自己決定権。だからこそ、彼は自分で休む期間を決め、「出産後、奥様が退院する日から1週間休む」という育児休暇を選択しました。
病院から退院する奥様とお子様を迎えにいき、そこから自宅での新生活を3人でスタート。1週間後に職場に復帰されたとき、奥様からわたしたち宛に感謝のお手紙をいただきました。まだまだ男性の育児休暇が浸透していない社会で、奥様がいちばん大変なときに一緒に寄り添える時間を持ってもらえたことを、わたしも自分のことのように嬉しく感じています。
会社によっては、有給休暇をとるために、前日に残業して仕事を終わらせたり、逆に休んだ翌日に仕事が溜まってしまったり、「有給休暇をとるとかえって大変になる」本末転倒な状況も起こっているといいます。
従業員の休みで減った売上は「必要経費」
けれども、佰食屋では、思う存分休むことができます。それはなぜか? 休みをとってもほかの従業員にしわ寄せが来ることがないから、です。
そもそも、そのためにわたしは経営者として、従業員数に余裕を持たせて採用しています。正社員が休んでも、代わりに誰かがカバーできる体制があります。
ただ、どうしても代わりの人が見つからないとき。それでもムリしてその人に出勤をお願いするようなことは絶対にしません。いつもよりも一人少ない4人体制でお店を回すことになるなら、そのぶん20食少ない80食を目標にします。
足りないなら、減らせばいいのです。
そうすれば、休んだ従業員の負担を誰かが負う、なんていうことにはなりません。「あの人が休んだせいで大変だった」などと、誰も思わないはずです。
もし経営者が、「悪いけど4人でお店を回して。でも100食は売り切るように頑張ってね」とお願いしたら、その4人は、休んだ人に対して不満を持ってしまうでしょう。そうやってお店の中がギスギスして、誰かが休むことをほかの人が歓迎できない環境になってしまえば、大きな問題となります。
「休んでいいよ」と許可するのは、経営者であるわたしの責任です。
従業員が「休みたい」という気持ちを尊重し、結果として4人でお店を回すことになったのなら、売上を下げてでも休ませてあげるのが経営者としての役割。その日に出るマイナス分の売上は、必要経費です。