「誰一人として、仕事が原因で体調を崩してほしくない」

佰食屋では、税理士の先生に呆れられるほど、人件費が高くかかっています。それだけ、事業規模に対して多めに従業員を採用している、ということです。

「もう1人か2人分、削ってもいいんじゃないですか」と、たびたびアドバイスされます。けれども、目先の利益だけのことを考えても、ちっともいいことなんてないのです。

働く人にとって他人事でないのが、心の問題です。

中村朱美『売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放』(ライツ社)

心に変調をきたし、休職や退職を余儀なくされる人がたくさんいらっしゃいます。その原因の多くは、経営者が効率や生産性を優先させ、「従業員全員が毎日全力で頑張らないと会社が回らない」という状態を放置しているから、です。

従業員は人です。一人ひとり生きている人間です。

日々のメンテナンスが必要ですし、たまに体調不良にもなります。家族や子どもが体調を崩し、その看病をしなければならないときもあります。それに、病気になった人のケアに経費をかけても、その対象者以外の人にはなんの恩恵もありません。それよりも、会社側が前もって人員を確保することで、すべての従業員のために経費をかけたい、と思っています。

誰一人として、仕事が原因で体調を崩してほしくない。そして、これからも働き続けたい職場にしたい。

ギリギリの人員で組織を運営して、せっかく教育した社員が続々と退職してしまってから、必死で新しい人材を探すのか。それとも、みんなが気持ちよく仕事できる環境をつくり、長く勤めてくれる従業員ばかりの組織にするのか――。

どちらを選ぶか、ということ。

わたしは、迷わず後者を選びます。