「防犯カメラ」の配線が切断されていた
「悠仁さまの机にナイフを置いた男は、どうやって捕まったか」
『週刊現代』(6/1号)は、元号が変わる前に逮捕せよと厳命を受けた警視庁が、あらゆる手を使って容疑者の長谷川薫(56)をいかに追い詰めていったかを詳細に報じた。
4月26日に長谷川はお茶の水大学付属中学の敷地内に侵入した。秋篠宮悠仁(12)の机の上に、長さ60cmの棒に括りつけた2本の果物ナイフを置いた。
悠仁の警護は皇宮警察と警視庁の警備部警衛課が受け持っているが、彼が授業中は同席しない。この時はたまたま体育の授業で教室にはいなかった。
リミットは4月29日。それ以降だと新聞などで大きく扱われ、令和の祝賀ムードに水を差すというのだ。捜査の主導は捜査一課が受け持ち、極左を担当する公安刑事、「捜査支援分析センター」(通称SSBC)という専門部隊も投入された。SSBCは今年2月に東陽町で起きた「アポ電強盗殺人事件」で犯人逮捕に貢献した。2009年4月に設置された警視庁刑事部の付置機関で、約120名、防犯カメラなどの画像収集、分析のスペシャリスト集団だ。
中学の入り口にあるインターホンからの映像を回収した。そこには午前10時50分ごろ、「水道工事の者です」と告げ、鍵を解錠させた不審人物が写っていた。この不審な男に絞る。その前の10時30分ごろ、キャンパスの北西側に2mほどしかない外壁があり、そこに設置されているはずの防犯カメラの配線が切断されていた。
クレジット会社に「捜査事項照会」をかけて住所を把握
綿密に計画された犯行だった。逮捕後に長谷川は、「刺すつもりだった」といっているようだから、警備していた連中は冷や汗ものだったろう。
午前11時過ぎ、キャンパスから出てくる男を正門前のカメラがとらえていた。植え込みにヘルメットや作業服などを入れたビニール袋を捨てる。
男は東京メトロの茗荷谷駅に向かう。構内の防犯カメラが鮮明に男をとらえていた。
「SSBCは、様々な規格の映像を取り込むことができ、その映像を手配容疑者などの映像と顔照合ができる『撮れ像』と呼ばれる独自の機能を持っています」(ジャーナリストの今井良)。さらに、都内のどこに防犯カメラがあるのかという「設置データベース」も持っているという。
だが大型連休中で、防犯カメラの管理者と連絡が取れない事態が頻発した。
男は東京駅方面へ向かった。この際、切符ではなく交通系のICカードを使った。捜査員はすぐ東京メトロに「捜査事項照会」をかけ、ICカードの登録情報から長谷川薫という氏名が判明。同時に公安調査庁に極右、極左の活動家に同名の人物がいないかを確認。「該当なし」という返事。
長谷川は東京駅で降車、新幹線で新大阪に向かい、さらに大阪市西成区近辺に行ったことが駅のカメラなどで確認された。
ICカードや防犯カメラから、長谷川が事件前から都内のホテルに滞在していたことが判明。渋谷区の「東急ハンズ」で果物ナイフなどを購入していた。買い物をクレジットカードでしていたことがわかると、クレジット会社に「捜査事項照会」をかけ、銀行口座、登録している住所がわかった。