短期間で、防犯カメラ、ICカード、カード情報を入手

長谷川は、再び新大阪から東京方面の新幹線に乗り込み、小田原で下車してJR東海道線の平塚駅で降りた。捜査員らは、長谷川が駅前の東横インにチェックインしたことを確認して逮捕状を取り、外出先から帰ってきたところを身柄確保した。

リミットまで残り3時間を切っていた。だが、肝心のナイフを悠仁の机に置いた映像はない。否認されると窮地に追い込まれる。長谷川は「中学校に侵入したことは間違いない」と認めたことで事なきを得た。

しかし、長谷川の動きを見ると、単独犯ではなく、共犯者がいる可能性が高いのではないだろうか。本来ならもう少し泳がせて行動を監視するのだが、今回はそれができなかった。

これを読む限り、短期間で、防犯カメラ、ICカード、クレジットカード情報を入手して犯人を逮捕した警察のやり方は見事というしかない。

だが、『週刊現代』は気付いていないようだが、何度も出てくる「捜査事項照会」というやり方に疑問を持つ読者も多くいるのではないか。

「捜査上有効なデータ等へのアクセス方法」とは

『世界』(6月号)の「日本型監視社会」の中にある、共同通信社会部取材班による「丸裸にされる私生活」を読むと背筋がゾッとする。

共同は、最高検察庁が保管している「捜査上有効なデータ等へのアクセス方法等一覧表」をすっぱ抜いた。一覧表に並ぶ企業は少なくとも約290社、記載されたデータの種類は約360にも上る。

リストに記載されている項目は、データ等の名称、入手可能なデータの内容、保存期間、問い合わせ窓口、照会方法、照会・差し押さえ等に当たっての留意点など。

最初に来るのがANAマイレージクラブだそうだ。入手内容は、カード所有者の住所、氏名、生年月日、電話番号、勤務先、勤務先の連絡電話、マイルをためた実績も挙げられている。

ANAの保存期間は3年。照会方法は簡単だ。カード番号だけでなく、住所・氏名・生年月日・電話番号からできる。留意点として「クレジットの取引内容や使用履歴は回答していない」とあり、定形郵便で問い合わせ、返信用封筒には82円分の切手を貼るように指示されるそうだ。

リストに記載してある企業は、主要な航空、鉄道、バスなどの交通各社、電話、ガスなどのライフライン企業から、ポイントカード発行会社、クレジットカード会社、消費者金融、携帯電話、コンビニ、ガソリンスタンドからカラオケ、インターネットカフェ、ゲーム会社まである。

入手できる情報は、住所・氏名・生年月日・電話番号のほかに利用履歴、店舗利用時の防犯カメラ映像など。それらを手に入れれば、その人間の趣味嗜好から思想傾向までを丸裸にできる。