取材班が「底知れない気持ちの悪さ」を感じたワケ
共同によれば、このリストは「警察の協力を得て作成した」そうだから、検察だけではなく警察がこの一覧を使って個人情報を取ることなど日常茶飯事なのであろう。
またリストの作成者には「法科学専門委員会」というのも名を連ねている。共同によれば、この委員会は厚生労働省の文書偽造事件で、局長の村木厚子が無罪になった際、大阪地検特捜部の証拠改竄が明らかになったのを受けて、2011年に最高検に設置されたという。
客観的な証拠の重要性が改めて認識され、検察にもDNAや薬物などの鑑定方法、サイバー、デジタルフォレンジック(電子鑑識)など幅広い知識が必要と考えたからだそうだ。
共同取材班は、リストに目を通して「底知れない気持ちの悪さ」を感じたという。さらに大きな問題は、リストに載っていた企業の多くが、捜査機関側から「捜査関係事項照会」をされれば、顧客の個人情報を提供すると“明記”していることである。
照会を撥ねつける気概のある企業は多くない
「捜査関係事項照会」とは、刑事訴訟法197条に規定してある捜査手法のことで、捜査当局が官公庁や企業などに、捜査上必要な事項の報告を求めることができると規定されている。
家宅捜査や差し押さえなどは、裁判所の令状が必要になるが、内部手続きだけで照会をかけることができるが、報告を求められた側は照会に応じなくても罰則は受けない。だが、顧客のプライバシー情報が重要だと考え、照会を撥ねつける気概のある企業が多くあるとは思えない。
共同は一覧に掲載されている290社にアンケート取材を試みた。104社が回答を寄せ、そのうち91社が捜査関係事項照会による顧客情報提供があったことを認め、29社は、顧客向けの利用規約やプライバシーポリシーに、情報提供することを明記していないという。
回答を寄せた企業はまだこうした問題に気を配っているところで、中には、当局の要請に応えることをなぜ取材されるのか、訳がわからないというところもあったそうである。